認知再構成法‥

認知再構成法とは、考え方を変えて気持ちを楽にする認知行動療法の中の一つの技法で、適応的でない認知的な行動を、適応的な行動に変容させる介入をいいます。

簡単に言い換えると、ネガティブな認知をより望ましい形に変容させて実際の行動を変えていくアプローチということができます。人は、頭の中で何かを考え、評価し、計画をたてながらそれらを行動に移していますが、その頭の中で思い浮かべているものを認知的行動と呼び、ネガティブな認知的行動を減らしていくことを目的としています。

認知再構成法は、認知行動療法のひとつの技法として紹介されることが多いのですが、細かく分類すると認知療法ということができます。

しばしば、行動療法と認知療法は一緒に扱われ、認知行動療法と一括りにされることが多いのですが、行動療法が「客観的に観測できる行動」を対象にしているのに対し、認知療法は「目には見えない思考・認知」を対象にしているので、認知再構成法は認知療法の技法と位置づけることができます。

「頑張ったのに、結果はこれだけか」とか、「自分は他の人に比べてダメな人間だな」など、気持ちが沈んでしまったり、何事も後ろ向きに考えてしまったりすることはありませんか。そんな時、「認知療法」を使うと、気持ちが晴れやかになれます

心を悩ます原因は、偏った考え方によって出てくる「負」の感情によるもの。ですから、「正」の感情がでるように、考え方を変えればいいのです。

当相談室では、考え方を変えて気持ちを楽にするメソッド(認知再構成法)を心理療法の1つとして用いています、

精神分析的精神療法‥

カウンセリング、心理療法のニーズは急速に増えてきています。私たちの心は様々な体験の中で、気づかないうちに凝り固まり、制限を受けるようになり、それが強くなると人は不全感を感じながら生きていくことになります。精神分析的心理療法は、これまで制限されてきた、その人らしく生きていく力が十分に発揮できるようになる心の変化をめざす心理療法です。 

精神分析的精神療法は、「うつ」や「不安」などが主ですが、その人のパーソナリティや、人生で長く続いている問題の治療に適しています。当相談室のカウンセリングは、精神分析的精神療法を中心としています。

精神分析的心理療法ではリラックスした状態で相談者様に心に自由に思い浮かぶことをなるべくそのまま話していただく自由連想というやり方で面接を進めていきます。

カウンセラーはそれを聴き、感じたことやカウンセラーの中に生じた理解をお伝えし、相談者様の心についてともに考えていきます。そうした作業を繰り返していく中で、実に様々な心の体験をし、自分自身についての新たな発見や気づき、心の在りようの本質的な変化がもたらされていきます。 

こうした心の変化は、面接を十分に重ねていく中で、植物の成長のように自身のペースでゆっくりと現れて来ます。そのためカウンセリングは週1回以上の頻度で通常1年以上にわたって続きます。こうして時間をかけて得られた心の変化や成長は治療後も続く力強い変化となり得るのです。 

一般に精神分析的心理療法は精神的な症状がはっきりと出ている方から、そうでない方まで幅広く対象となります。ご説明したように自分を変えたい、心の世界に関心があり、ゆっくり時間をかけて取り組んでいく気持ちがあれば、多く方にとって精神分析的心理療法は有効であると思います。

ただ、一部の人の中にはこの心理療法が不向きの方もいらっしゃいますし、症状が強くてタイミングとして今はこうした心理療法を控えておいたほうがいい方もいらっしゃいます。そうした適応については心理療法を始める前にアセスメント面接を数回行い、カウンセラーのほうで判断させていただきます。

 

無意識の世界を見つめる‥

私たちは日常生活のあらゆる出来事を心で処理しながら生活しています。けれども、自分の心で処理できる範囲を遥かに越えた不安や怖れ、葛藤などがあると心は上手く働かなくなり、様々な心の病となって現れてしまうことがあります。頭ではわかっているのにいつも同じような悪循環にはまってしまうこともあります。

このようなことが起こるのは、心の悩みや苦しみの背景には、無意識のとらわれがあるからだと精神分析では考えます。人の心には自分ではわからない無意識の領域があり、無意識のとらわれによって、何らかの症状や悩みが生まれたり、同じような対人関係上の問題が繰り返されたりすることがあります。

こういった状態になると自分が何を考えているのか、なぜ今のような状況になってしまったのか分からなくなり、自分や他人を責めたり、不安なことを頭の中で繰り返し身動きが取れなくなったりします。

精神分析的心理療法は、精神分析を応用した心理療法で、いま目の前にある悩みを語るだけでなく「心に浮かんだことをどんなことでも話す」という方法によって進められます。それは、今ある問題や生きにくさや症状が、これまでの生き方と密接に結びついているという考えを元にしています。

心の底にある自分自身の気づかなかった部分を理解し、受け入れていくことで症状や悩みに対処しやすくなり、過去の人生を自分の中にうまく収められるようになり、自身のあり方や人との関わり方も自然と良い方向へと変化していきます。

そして、この療法は症状や問題の解決のみを目指すのではありません。無意識のとらわれから解放され、より自分らしく、自分に正直な生き方を可能にします。


精神分析的精神療法を受けるには‥

相談者ご自身が精神分析的精神療法について関心を持っている場合もありますし、一般のカウンセリング中で、担当カウンセラーが精神分析的精神療法の適応を考え、提案する場合もあります。

どちらの場合にも、この治療法が適しているかどうかの検討をまず行います。精神分析的精神療法によって何らかの達成が見込めるかどうか、現時点の心身のコンディションが治療を続けていくことに相応しいか、現実的な条件が治療方法にあっているかどうか、などを検討します。

このために、まず予備的な4回ほどの連続した面接(アセスメント面接)を行います。この際、相談者様も治療者とこのような治療を継続していくことが助けになるかどうか、体験して確かめることができます。

次にそこで得られた見立てをカウンセラーはs相談者様にフィードバックし、相談者様とともに治療を継続するかどうか決定します。精神分析的精神療法を始める場合は、カウンセラーと相談者様との間でルールを確認し、契約を交わします。

こうしたプロセス自体が心理療法の基礎固めであると言っても良いでしょう。 継続する精神分析的精神療法が始まったなら、ルールと契約に支えられたなかで、自由に語る、そして考えることが続いてゆきます。


どのような症状や問題に向いているのか‥ 

精神分析的精神療法は、症状としては、うつや不安などが主ですが、その人のパーソナリティや、人生で長く続いている問題の解決に適しています。当相談室のカウンセリングは、精神分析的精神療法を中心としています。

相談の内容としては、親子関係や夫婦関係の悩み、恋人との問題、子育ての悩み、職場などでの人間関係の悩み、出社困難、などがあげられます。具体的に扱われる問題としては、「失敗することを極端に恐れるあまり、仕事がはかどらない」「人との関係を悪くしたくないので、頼まれるといつも無理して引き受けてしまう」「言いたいことを言うと、相手から嫌われてしまう不安がある」などさまざまです。

精神分析的精神療法というと、何か難しい治療のように思われるかもしれませんが、自分が話したいように話し、そのまま話を聞いてもらえるという体験はとても貴重です。この体験だけでも、人の心は安定する方向に向かい、また実生活における困難にも立ち向かう気力も生まれるものです。

精神分析的精神療法というと、何か難しい治療のように思われるかもしれませんが、自分が話したいように話し、そのまま話を聞いてもらえるという体験はとても貴重です。この体験だけでも、人の心は安定する方向に向かい、また実生活における困難にも立ち向かう気力も生まれるものです。 


精神療法の種類 ‥

心の病を持つようになった様々な根本的な問題を、時間をかけ話し合うことにより解決していくのが精神療法(カウンセリング)です。「カウンセリング」という言葉は、幅広い意味で用いられていますが、そのなかでもより専門的な精神療法のうち、いくつかをご説明させていただきます。

精神療法のなかには、何々療法などと名前のついたものが数多くあり、それぞれに特徴があります。どのような問題にどのような治療法が向いているかは、専門家でも判断するのはなかなか難しいものです。

精神療法をおこなう期間は、それぞれのニーズによってまちまちですが、行う期間によって長期精神療法と短期精神療法に分けられます。


□長期精神療法‥                                          長期精神療法は、6ヶ月から2~3年という長い期間をかけて行うもので、当相談室では精神分析的精神療法を中心としています。ここで扱われる問題としては、親子や夫婦などの関係がうまくいかないこと、親密な関係をうまく持てなかったり続かなかったりすることなどさまざまですが、ひとりでは解決が難しく、長く続いている問題についてお話を伺いながら解決をめざしていきます。


□短期精神療法‥                                           短期精神療法は、期間としては3~6ヶ月程度のことが多く、職場での対人関係問題など限定した問題を解決していきます。短期精神療法の主なものには、短期精神分析的精神療法・認知行動療法・対人関係療法がありま

当相談室では、精神分析的な方法を中心として、必要に応じて上記、認知行動療法・対人関係療法のような方法を組み合わせて行います。


A・認知再構成法                                            うつや不安などの症状に対して、その背景にあって問題となる思考パターンを「自動思考」と名付け、その自動思考を変えていくことによって症状の改善をめざす短期精神療法のひとつの方法です。


B・対人関係療法                                            精神分析的な治療から発展したうつ病などに対する短期精神療法のひとつです。対人関係療法では、うつ症状などに影響を与えている人間関係の問題に焦点を絞ります。

つまり自分の性格や過去の出来事にはひとまず蓋をしておきます。そして現在かかえている対人関係上の問題の中からテーマをひとつに絞り、その状況に対処できるようになることを目標にします。そのテーマとは、死や別れによる悲哀、夫婦などの対人関係上の役割をめぐる不和、役割の変化、対人関係の乏しさ、という4つの問題のうちのひとつとなります。

また、ご本人に対しておこなう精神療法とは別に、思春期の子どもを持つ親御さんを対象に、子どもの問題についてどのように対応したらよいかを話し合う親ガイダンスや、ご家族やご夫婦が同席してお互いの問題の解決をめざす家族療法、夫婦療法もあります。

対応可能な心理療法‥

特定の訓練、経験を積んだ専門家によって、心理的問題を抱える相談者の、認知・行動・感情・身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしくは軽減することを目指します。

心理療法はカウンセラーとの対話の中で、自己理解を深め、新たな対処行動や考え方を身につけていき、無意識的問題にも取り組んでいきます。当相談室では相談者の状況に応じ様々な心理療法でアプローチを行います。 その代表的なモデルに、精神分析療法やクライエント中心療法、認知行動療法があります。


□EMDR

眼球運動による脱感作と再処理法は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して効果がある心理療法です。従来の心理療法が5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを、EMDRでは非常に短時間に進めることができます。起こったできごとのすべてをこと細かく語ることは必要とはされないため、大変ストレスの少ない方法です。 

□認知療法 

相談者が自分の考え方の歪みを認識し、それらの歪みが自分の人生の中にある問題にどのように結びついているかを理解できるように導くものです。人の感じ方や振る舞い方は経験をどう解釈するかによって決まるという考えが前提になります。自分の信念や思い込みを認識することで、自分が経験したことについてそれまでと違った考え方ができるようになり行動や感情に改善がもたらされます。 

□行動療法

適応行動を学習しつつ、それまでの不適応行動の習慣を消すことができるように考案されたいくつかの介入を行います。しばしば恐怖症の治療に利用される 曝露療法も、行動療法の一例です。行動療法は、認知療法と関係のある治療法で、これら2つを組み合わせた認知行動療法も用いられています。

□自我状態療法

自我状態は、内なる声、イメージとして、身体感覚、感情、色などとして現れることがあります。自我状態は解離性同一性障害における交代人格のように人物像として出てくるとは限りません。何らかの葛藤や機能不全があるとき様々な症状として表面化します。心の回復を阻害する要因となることもあります。イメージを通して自我状態にアクセスし、葛藤を解消し、平衡状態を取り戻します。  

□自律訓練法 

ドイツの精神科医シュルツによって創始された自己暗示を利用した治療技法です。ストレス緩和、心身症、神経症などに効果があります。「右手が重たい」「右手が温かい」などを自身で繰り返し心の中で唱えつつ意識集中を行なっていくことで、実際に身体的変化を生じさせ、リラクセーションを引き起こし、自律神経のバランスを整えます。

□森林浴自然療法 

森の中にいると、爽やかな気持ちになったり、心が落ち着つくものです。森林では都市に比べてストレスホルモンが減少することや、免疫力が向上し、その効果は一カ月程度持続すること等が証明されています。諸外国では予防医療が定着し、日本でもその流れを受け、地域の豊かな自然を、心と体の健康づくりに役立てていこうとする森林療法を当室は積極的に取り入れています。

□オープンダイアローグ 

オープンダイアローグでは、患者、家族、カウンセラーが輪になって「開かれた対話」を行います。また、その対話の最中、ときおり専門家同士がその場で感じたことを話し合い、それを当事者たちに聞いてもらうというリフレグを挟みます。そこで生じる相互作用によって、自然に回復が起こっていきます。

□誘導イメージ療法 

心にイメージを描くことで精神をリラックスさせ、健康状態を向上させる目的があります。医療分野では、痛みを軽減したり、がんや心的外傷といった病気の治癒を促します。誘導イメージ法では五感すべてを使い、自分自身で、またはカウンセラーによってイメージの誘導を行います。

□リラクゼーション法

心身医療の一種であるリラクゼーション法には、緊張やストレスを解消するために特別な療法が含まれます。この療法は特にストレス反応をコントロールする(交感神経系を介して)・血圧と心拍数を低下させる・筋肉の緊張を和らげる・脳波の活動を変化させることを目的としています。

□支持的精神療法

支持的精神療法は最もよく利用されているものです。その成否は相談者とカウンセラーとの間の共感的かつ支持的な関係にかかっています。自己の感情を表現するよう促すとともに、カウンセラーが問題解決の手助けをします。

□スキーマ療法

自動思考を生成させる信念体系のことをスキーマと呼びます。自分は愛されていない、必ず失敗するなどの18の非機能的な信念があります。スキーマによって気分障害のみならず人格障害などの問題が生じます。スキーマを修正するために開発されたのがスキーマ療法です。治療的再養育に取り組むことで様々な問題の根源にある愛着の傷を修復します。  

□自由連想法

人間関係のパターンが現在どのように繰り返されているかを本人に理解してもらうことに焦点が置かれます。過去が現在にもたらす影響を理解することで、人間関係に適応し、役割を果たしていく新たな方法を見つけ出します。