ドメスティック・バイオレンス‥
ドメスティック・バイオレンス(DV)暴力の内容は、殴る蹴るなどの身体的暴力のほか、心理的暴力、社会的暴力、経済的暴力、性的暴力などがあります。身体的暴力は、殴る、蹴る、掴む、つねる、髪を引っ張る、揺さぶる、頭を打ちつける、体を持ち上げて投げつける、首を締める、刃物やその他の武器を使うなど、さまざまです。暴力を振るうことをほのめかす脅しだけでも、十分に女性を怖がらせ、従わせることができるでしょう。
① 心理的暴力は、大声で怒鳴ったり、「お前はバカだ」と見下したり、「俺の言うことを聞かないとどうなるかわかっているだろうな」と脅したり、また無視する、大切な物を壊すなどの暴力です。
② 社会的暴力には、友だちに会ったり電話したりするのを細かく監視する、実家との付き合いを制限する、外出させないなどがあります。
③ 経済的暴力は、生活費を渡さない、貯金を勝手に使うなどがあげられます。
④ 性的暴力には、望まない性行為の強要や、避妊に協力しない、見たくないポルノを見せるなどがあります。
これらの暴力は、いくつかが重なり合って起こることが多く、被害者にとっては、耐え難いものです。また、DVは、結婚している夫婦にだけで起こるのではありません。それは恋愛中のカップルにも見られ、交際中のカップル間で起こる暴力的な支配を「デートDV」と呼びます。
DVがもたらす影響‥
親密な関係の中で暴力が繰り返されると、心と体に様々な影響が出てきます。なかでも、DVが、PTSDの反応を引き起こすことが注目されています。PTSDというのは災害や事件・事故、自分の体に脅威が及ぶような出来事(トラウマ)を体験して強いストレスを受けた後で現れる症状です。
主な症状は再体験、回避・麻痺、過覚醒の3つです。再体験は、いやな場面がフラッシュバックしたり、悪夢を見たりします。回避・麻痺は、怖い経験を思い出させる人や場所を避けようとしたり、喜怒哀楽の感情を麻痺させたりします。過覚醒は、寝つきが悪い、些細なことで感情が爆発する、ちょっとした物音で飛び上がる、いつも過剰に警戒することです。
脅えや恐れの中で自分の本当の感情がわからなくなり、物忘れや記憶障害が起こることもあります。そんな中で、徐々に無気力になり、自分を大切にしようという気持ちをなくしていきます。もう自分なんかどうなってもいいというあきらめや絶望感でいっぱいになり、誰も自分の状況を理解し助けることはできないと、人間不信の気持ちが強くなります。
ストレスにさらされ続けることで、イライラしたり、根気がなくなったり、相手の言うように自分はダメな人間だと思い込まされて自己評価が低下し、「こんな自分だから、こうなっても仕方がない」と自分を責めてしまうこともあります。また誰にもわかってもらえないと人間関係を保つことも難しくなり、自分からひきこもりがちになり、孤立してしまいます。
他にも、うつ状態になったり、不眠に悩まされることもあります。頭痛、偏頭痛、めまい、吐き気、震え、睡眠障害、動悸、呼吸困難、胃痛、発熱、摂食障害など身体の症状に出たり、アルコール依存や様々な体の不調、自殺への思いが頭を離れなくなることもあります。
暴力から逃げ出せない理由‥
ひどい暴力を振るわれているケースでも、なかなか逃げ出せないことがあります。これは、暴力による支配があると、逃げ出したくても逃げられないような心理状態にさせられるからです。暴力が繰り返されると、何をしても無駄だという無力感が学習されます。これを「学習性無力感」といいます。
こんな実験があります。犬を檻の中に入れておいて時々電気ショックを与えます。そうすると最初は一生懸命に逃げようとするのですが、いつ電気ショックがくるかわからない状態が続くと、そのうちあきらめてしまい逃げ出さなくなってしまうわけです。これと同じことがDV被害者の女性にも起こっているのではないかと言われています。
またDVによる暴力は、いつも起こっているわけではなくて、緊張が高まる時期、爆発と暴力が起こる時期、穏やかな愛情のある時期と、3つのサイクルに従って起きます。第一相においては、男性が苛立ちをつのらせ、小さな虐待が繰り返されますが、女性の方はそれをなんとかなだめようと気を使い努力を続けます。
でも、その緊張は、徐々に度合いを増していき、第二相に移行し、大きな爆発が起こります。被害女性はしばらく虚脱状態に陥り、男性は、我に返り、後悔しはじめます。そして第三相では、男性は懺悔し、二度と暴力をふるわないと誓い、優しく愛情深い態度をとります。そのため、女性は「自分さえ我慢すれば何とかなる」と、夫を信じて新しい関係に賭けようと決めます。そうこうするうちに次のサイクルがやってきます。
DV加害者の特徴‥
DVの加害者は、見るからに乱暴そうな人というのは、少ないです。家庭の外では、人当たりがよくて、「いい人」に見えることが、よくあります。そのため、周囲からは、「あんな優しそうな人が暴力をふるうなんて」と、なかなか信じてもらえなかったりします。
① 意志が弱い‥
意志が弱い男性は、将来的にDV加害者になる可能性があります。自分で決めたことをすぐに諦めてしまうタイプです。
このような男性は、「俺はこれから真面目に働く」などと言いながら、すぐに転職を繰り返したり、仕事のサボり癖があります。あとは、「ギャンブルはもうやめる」と言いながらも、3日もしないうちにまたギャンブルに走る特性などがあります。
意志が弱いからこそ、「暴力は止めよう」と決めたとしても、その決意が続かずまた暴力を繰り返すでしょう。
② 女性に依存している‥
DV体質というのは、いわゆる依存体質です。ダメだとわかっていながらも、暴力に依存してしまいます。
そしてその暴力は特定の女性に対して向けられるものです。つまりは、その女性に対して依存しているということです。女性に依存しているからこそ、女性に自分を理解して欲しがり、認めてほしいとも感じてしまうのでしょう。
そのため、女性に依存している男性は、依存しやすい体質と考えられ将来的にDVに陥りやすい性格だといえるのです。
③ 気分の浮き沈みが激しい‥
そもそも気分の浮き沈みが激しい男性はDV加害者になりがちです。自分の感情をうまくコントロールできないタイプです。
お付き合い当初から気分にムラのあるタイプには要注意です。何かのきっかけですぐにキレて暴れたり、攻撃的な態度をとる男性はDV予備軍でしょう。
感情のコントロールが苦手だと、暴力以外のストレス解消手段がわからず、すぐに手をあげてしまう傾向があります。
④ 内弁慶な性格‥
会社や友達同士の集まりなどでは、大人しく物静かなことが多いのがDV加害者の特徴です。このような男性に限って、恋人や家族の前では感情を爆発させ、愚痴を言ったり八つ当たりしたりします。
内弁慶かどうかは付き合う前はわかりづらいことが多いため注意が必要です。
DV被害に遭ってからでは遅いので、相手の友達などに話を聞いて、DV男の傾向がないか事前にチェックすることがおすすめです。
⑤ 基本的には優しい‥
DV男性は基本的には優しい男性が多いです。暴力の後にすぐに後悔し、女性に優しく接すのはそのためです。だからこそ、女性もなかなか離れられず、「また昔みたいに優しくしてくれるかもしれない…」と、淡い期待をします。
このように優しくされるからこそ、女性も男性を見捨てることができずにまたDVを繰り返す悪循環に陥ります。決してDV男性が根っから凶暴というわけではなく、何かのきっかけで豹変することが多いかもしれません。
しかし、本当にあなたを大切に想っていれば暴力を振るうことはありません。女性の中には「自分が悪いからいけないんだ」と、自分自身を責める人も多いですが、それは間違いです。暴力では問題を解決することはできません。
DVから抜け出すには‥
恋人関係、夫婦関係において、「自分がいなければいけない」「自分が彼を支えていかなければ…」という使命感を持ち、自分が彼から離れてしまっては彼が可哀想、彼がダメになってしまうだろうと思い込みます。
この相手のためにという思い込みこそ「共依存」です。ひどいDVで辛い思いをしていても、誤った使命感から自分の存在価値を見出してしまいます。あるいは、「相手に未練がある」「逃げたことで仕返しされる恐怖」「経済的な面で逃げられない」などといった、いくつもの心理的要因が重なっているでしょう。
DV加害者は、暴力を振るう時は相手の心を支配しようという支配欲が働きます。暴力を振るえば相手は自分に忠実に従う事を良く心得ているのです。なぜかというと、いう事を聞かせるにはそれが一番手っ取り早いからです。そこに、相手への思いやりなどは一切ありません。
どうしても、共依存になってしまうと、女性は相手に尽くしてしまいます。もともと優しく気配りをする女性らしさを持っているため、自分の事より相手を優先にして生きてしまうのです。自己主張もあまりしません。
周囲の家族、友人は最初はとても心配し、何とか別れさせようとしますが、何といっても共依存に陥っていますから、他人の意見に耳を傾けようとしません。他人を信用しないため、周囲も徐々に距離を置き始め、孤独になってしまうのです。
DV加害者は、女性に対して執着心があります。離れていかないように、暴力と優しさ、暴力と自分の弱さを上手に使い相手を支配します。自分都合でうまくコントロールすることで、お互い共依存の関係を作り出してしまうのです。
お分かりだと思いますが、二人で一緒に過ごせば過ごすほどマイナスです。共依存は視野を狭め閉鎖的になるので、人としての心の成長は見込めません。DV加害者のそばにいると、心身共にダメージを負い、心の病へと発展していく可能性が高いので、早い段階で対処する必要があります。
① DV被害を認める‥
DV被害から脱出する第一歩は、DVの被害を受けていることを認めることです。「たいしたことではない」「暴力というほどでもない」など、長い歴史の中で、家庭内で起こる暴力を軽く見る風潮ができ上がっているので、暴力被害を認めることは簡単なことではないでしょう。しかし、どんな理由があろうとも、暴力を正当化してはいけません。
繰り返しDV被害に遭うと、自分が正しいのか間違っているのか判断がつきにくくなります。深く傷つけられた人は、「彼の言うことを聞いてあげなかった私が悪いんじゃないか」と考える傾向があります。
まずは、「これはDVである」と認めることです。自分は被害者であると認められれば、「自分は悪くない」と考えられるようになります。「バカだ、のろまだ、と言われ続けるのはおかしいのではないか」「平手打ちされないといけないことは何もない」「友だちに連絡を取るのを制限される必要はない」と考えることにもつながっていきます。
② 安全を確保する‥
次に暴力被害に遭った女性に必要なのは、<安全の確保>です。何より身体の安全と心の安全が確保されなければなりません。そのためには、危険を認識する必要があります。DV遭うと「これぐらいたいしたことはない」と暴力を低く見積もりがちです。しかし、どんな理由があろうと暴力に耐えなければならないことはありません。身体の安全と心の安全は、すべての人に保証される権利です。
DVの暴力から逃れ、安全な生活を確保するためには、夫やパートナーと距離を取るのが一番です。かといって、すぐに別居や離婚の決意はつかないものです。すぐに別れないとしても、暴力の危険があるときにすぐに逃げ込める場所を調べて準備しておくことは、安全の確立につながります。
③ 味方を探す‥
DVの被害者は、しばしば孤立した状態に置かれます。家庭の恥だと考え、人に話すのは恥ずかしいという気持ちも働きます。加害者に友だちづきあいや行動範囲を制限され親しい友人との関係が切れているために相談する相手がいないこともあります。DVの被害にあっているなら、まず、ひとりでも多くの味方を探すというのが大切です。知り合いの中で、誰が心配し、力になってくれるかのリストを作りましょう。
④ 情報を集める‥
また、困ったときには、DVの専門機関へ相談して、今後どうすればいいか話し合ってみるのもいいと思います。全国の配偶者暴力相談支援センターなどに電話をして、今後どのようにしていけばいいか、相談しましょう。
緊急避難の方法や一時保護についての情報、離婚や避難をした際に利用できる福祉制度などの情報を集めましょう。
とにかく、ひとりで抱え込んで悩んでいても、状況は変わりません。思い切って、人に打ち明けて、DVから逃れる方法を考えることです。
DV被害者・加害者カウンセリング‥
愛媛心理相談室のカウンセラーは、DV・モラハラの心理臨床に精通し、35年以上の経験と実績があります。温和で優しいカウンセラーが、相談者さまに寄り添い、親身になってDV被害者だけでなく、加害の更生サポートもしております。
DVは、夫婦の一方が加害者、もう一方が被害者となりますが、互いに加害者や被害者であることを認めたくなかったり、加害者や被害者であること自体に気が付いていないことも多くあります。
DVの加害者が夫で被害者が妻の場合、妻は夫より体格や腕力が圧倒的に劣るため、肉体的・精神的な暴力により妻に致命的な結果が生じてしまうこともありますので、早急な対応が必要です。
一方、DVの加害者が妻で被害者が夫であることもあります。夫は、妻からDV・モラハラを受けていることを知られるのが恥ずかしい、といった心理が働き、なかなか表面に出てこないのが実情です。また夫は、もし妻に反撃したら、妻に大けがをさせてしまうのではないか、と思い、DVをする妻への反撃をためらう、という心理も見られます。
愛媛心理相談室では、DV・モラハラの加害者お一人お一人の実情や生活環境、性格等に合わせたカウンセリングメニューを作成し、きめ細かな対応をさせていただきます。