職場のハラスメント‥

ハラスメントとは、相手に対する「嫌がらせ」のことです。セクハラは性的な嫌がらせのことで、割と昔からありますが、今はパワーハラスメント、アルコールハラスメントなど30種類以上のハラスメントがあります。

ハラスメントは行う側に意識がない場合も多く、たとえ悪意がなくとも相手を傷つけたり苦痛を与える行為はハラスメントとなります。

毎日同じ職場で働いていると、慣れが生じてきますし、意識しないうちにハラスメントが起きているケースもあります。

しかしされた側は強いストレスを感じたり、苦痛を感じるものです。加害者が上司や、立場が上の人となると、なかなかハラスメントを受けたことを言い出せなかったり、そもそも「教育の一環」「業務上、適正な言動」と言われてしまうと、ハラスメントと気が付かずに1人で悩んでしまうケースも多いです。

職場でのハラスメントは、単純に言葉による嫌がらせも起きやすいですが、「これをしなかったら仕事から外す」「応じなければ仕事を振らない」といった、力関係を行使しやすいため、被害者側は大きな苦痛を伴うことが多いです。

加えて、「教育の一環」と言われてしまうと何も言えなかったり、自分のためを思ってくれている、という思考になって周りにも相談できなくなるケースもあるので、しんどいと思ったらまずは周りに意見を仰いでみて、ハラスメントでないか確認してみるのもいいでしょう。

どんな相談ができる?

〇 会社でハラスメントを受けているけどどうすればいいか分からない。

〇 職場で上司にキツく当られているけど、ハラスメントかどうか分からない

このようなことでお悩みではないですか?

ハラスメントは、する側に悪意がなかったとしても、された側が傷ついた、苦痛を感じた、というようであれば、ハラスメントとして扱われることになります。上司から嫌がらせを受けているけど、相手が相手だけに言いにくい、そんな風にお悩みの方も多いです。

しかし、家族や友人に相談しても、それがハラスメントとして扱っていいのか分からない、ということもあるでしょう。そんな方はぜひ、カウンセリングを活用してみてください。カウンセラーが専門家の立場から相談に乗らせていただきます。

モラル・ハラスメント‥

通称「モラハラ」とは、言葉や態度によって人の心を傷つける精神的な暴力です。最近では、テレビや雑誌などで、目にすることも増えてきました。当室でも「モラハラ」の相談をよく受けます。

モラハラは、夫婦間、家族間、会社内、学校内など、社会の様々な場所で起こっています。加害者は、悪意のあるほのめかしをしたり、嘘をついたり、無視をしたり、侮辱するといった方法を使って、相手を巧みに攻撃します。

一つひとつは小さくても、それが一定期間、繰り返し行われると、精神的にダメージを受けしまうことになります。

① 誹謗中傷・悪口や陰口を言う

② 無理難題の要求をしてくる

③ 仕事と関係のない小さな要求をする

④ プライバシー侵害

暴力を伴わない「大人のいじめ」と捉えておけば、ある程度イメージできるのではないでしょうか。

モラハラ2つの段階‥

モラハラには、2つの段階があります。

まず最初は、①<支配の段階>です。加害者が被害者を惹きつけることから始まります。それがうまくいくと、次は相手が自分から離れなくなるように少しずつ影響を与え、被害者の考えや行動をコントロールしていきます。

そして、被害者が、少しでも反抗しようとすると、加害者の心に憎しみ(攻撃心)が生まれ、②<暴力の段階>へと進み、嫌味や皮肉、中傷や悪口によって、被害者をいためつけます。

それも、怒り口調というよりも、冷静に述べられることが多く、被害者は、「自分が悪いから、怒らせてしまうのだ」「自分がもっとうまくやれるといいのにできない自分が悪い」と思わされてしまうことがしばしばあります。

言われないように気をつければいいと被害者は必死に努力を重ねますが、経済観念がないと責められて倹約すれば、「おかずが粗末だ!亭主をバカにしている!」と言われ、改善すれば浪費家扱いされるなど、何をしたところで被害者が悪いということになるので、びくびくしながら責められる日々を送らねばならなくなります。

また、身体的暴力と違い、傷が目に見えないため、なかなか周りに理解してもらえず、一人で抱え込むこともあります。

モラハラの加害者は、自己愛が強く、自分は特別な存在で、自分のためなら誰でも喜んで尽くしてくれるものと考える傾向があります。

そして、他者への共感性に乏しく、相手が苦しんでいても、相手が悪いのだから仕方がないと思い、自分自身の非を認めたり、反省する気持ちが乏しいと言われています。

ハラスメントに気づいたら‥

もし、モラハラに気づいたら、「自分さえ我慢すれば何とかなる」と思わないことです。身動きのできない状態から抜け出すためには、まず信頼できる人に相談し、今の状況を客観的に観察してみましょう。

相手と関わらないようにすることが最善の方法ではありますが、かなりのエネルギーがいり、すぐに実行するのが難しい場合もあるでしょう。

カウンセリングでは、モラハラの被害を減らすにはどうすればいいか、またモラハラの加害者から距離を置く方法について一緒に考え、相談者の方が、自分らしさを取り戻していくお手伝いをします。

加害者の共通点‥

モラハラを行う加害者には、いくつかの共通点があります。これらを理解することは、モラハラを見分け、適切に対処するために重要です。 



① 自分を過大評価している‥

モラハラを行う人は、自分自身を過大評価していることがあります。彼らは自分の能力や重要性を過剰に信じ、その結果、他者を見下したり、自己中心的な行動を取りがちです。

自分に対する過大評価が、他者にへの非難や批判を正当化する根拠となり、彼らの行動をさらに悪化させる可能性があります。


② 共感能力が低い‥

共感能力の低さも、モラハラ加害者の特徴の一つです。彼らは他人の感情や立場に対して共感する能力が低く、その結果、他者の感情やニーズを理解し、尊重することが難しいのです。この共感能力の欠如は、他人の感情を考慮せず、自己中心的で冷淡な行動を取る原因となります。

モラハラ加害者は、ストレスに対する耐性が低い傾向にあります。彼らは仕事だけでなく家庭や友人関係でストレスや圧力がかかると、感情的に不安定になりやすく、その不快感を職場で他人に向けて発散することがあります。


③ 相手をコントロールしたがる‥

加害者は、他者をコントロールしたがる欲求を潜在的に持っていることがあります。彼らは自分の意のままに他人を操りたいと考え、そのためには威圧的な態度や権力を行使することをいといません。

このコントロール欲求は、他人に対する心理的な圧力や操作を通じて表れることが多く、被害者に精神的なストレスを与える原因となります。


モラハラ行為を変えていくために‥

以下にモラハラ行為にいたる加害者の心理と、変えていくためのカウンセリングの取り組みの一例を紹介します。 



① 相手を思い通りしたいという支配的傾向‥

他人を支配しようとする傾向もうかがえます。自分の思う通りに操りたいと考えているからです。そのため、他人の気持ちや人権は度外視し、あたかもモノのように扱ってしまうのです。 

こういった人は、相手が思い通りに動いてくれることを期待し、さらには相手が自分の望む考えや感情をもつことを期待し、そうでなければイライラして責めてしまう人が少なくありません。

そもそも自分以外の人が、自分の思い通りに感じ、考え、行動することはあり得ません。期待通りに感じ、考え、動くことを前提とするのではなく、期待通りにはならないことを前提とする逆の発想をすることも役立ちます。相手が、少しでも理解し、動いてくれるならありがたいぐらいの気持ちでいれたら、相手を責める気持ちは減るでしょう。


感情のコントロールが苦手‥

イライラや怒りの感情が生じること自体は誰にでもある自然なことです。しかし、それをそのまま人にぶつけて良いわけではありません。

モラハラ行為をする人の中には、思うようにならないストレスや不安を自分で抱えられず、相手に怒りの感情としてぶちまけてしまうことがあります。すぐかっとなったり、延々と怒り続けたり、自分で機嫌を直せないことがあります。

アンガーマネジメントに取り組むことが役立つでしょう。また、ストレス・コーピングや自分自身の機嫌の取り方を身につけていくと楽になります。


③ 自他の境界線の問題がある‥

モラハラをする人は、例えば、相手のスマホやカバンを勝手に見てしまうなど、踏み込んではいけない相手の領域にまで踏み込んでしまうことがあります。

親密な関係であってもプライバシーがあることが受け入れにくいのでしょう。また、相手には、自分と異なる感情や考え、欲求、人間関係や世界があること、そしてそれは尊重されるべきであるという感覚が薄いことがあります。

親との関係で境界線を踏み込まれてきたために、適切な境界線の感覚が育めなかったことが背景にあることは多いものです。

相手の世界を尊重することや、適切な物理的、心理的境界線の感覚を身につけられれば、自他の境界線を踏み越えることを防げるでしょう。


④ 自己肯定感が低い‥

モラハラをする人は一見プライドが高い人のように思われがちです。しかし根柢では劣等感を抱え自己肯定感が低いことが少なくありません。劣等感から目を背け、かりそめの自信を感じたいがために、相手の優位に立ち、支配し、力を誇示することを望んでしまうことがあるのです。

また、相手が他の人と関係を作り、自分の世界を楽しむことが苦痛で束縛してしまうことがありますが、このことの背景に、自分から離れていくのではないかという自信のなさからくる不安があることもしばしばあります。承認欲求が強いのも自己肯定感が低さと関係しているでしょう。

誰かを支配や束縛することで得られる自信や安心はかりそめのものです。自信がなく自己肯定感を身につけられなかった背景を掘り下げると、親からの認められなかったことやほめられなかったこと、学校生活でつらい体験をしたことが関係していることがあります。このような場合は、カウンセリングで過去を整理し、自らを肯定していく取り組みは、あなた自身を楽にしていくでしょう。


⑤ 被害的である‥

自信がないことと関係して、被害的な思考パターンとなっている人もいます。相手の何気ない言動に、自分を軽んじている、馬鹿にしていると思い、それが怒りに繋がっていくのです。

相手の言動にない意図を読み取り、軽んじた、馬鹿にしたと解釈しているのは自分自身です。自分の考え方、捉え方のパターンに気づき、自分を楽にする考え方、捉え方に変えることに取り組むことによって、偏った解釈からくる怒りを減らすことができます。認知行動療法が役立つでしょう。


⑥ 不適切な環境で育った‥

育った家庭環境に問題がある場合も少なくありません。例えば親が、支配しコントロールするタイプだった場合、同じことを他者に繰り返してしまうことがあります。不適切な関わり方を学んでしまい、適切な関わり方を学べなかったのです。

ネグレクト環境にあった場合は、人との共感的関わりを体験できず、他者に共感することが難しくなることがあります。親との愛着関係に問題があり、関係への不安からモラハラになっていることもあります。

人との関わり方やコミュニケーションの取り方を再学習することが役立ちます。また、愛着に問題がある場合は、カウンセリングを通して子ども時代を振り返って整理し、癒しのプロセスを進めると良いでしょう。


⑦ 優越感がある‥

自分は相手より知識や経験がある、賢い、正しいなどの思い込みから、相手に「教えてあげなければ」と上から説教をしてしまう人がいます。

モラハラ行為者が男性の場合は、社会文化の風潮や親の夫婦関係を見て、男性は女性より優位だとの価値観を身につけてしまっている場合があります。相手を所有物のようにとらえてしまっていることも少なくありません。

良好なパートナシップのために、対等な関係性であることは重要です。対等な関係性とはどのような関係性かを学び、実践していくことは、他者と良い関係を結ぶことに繋がるでしょう。

モラハラ行為の背景にある心理や変えていくための取り組みは人によってさまざまに異なります。自分自身を変えることは、簡単ではないように感じられるかもしれません。

しかし、あなた自身に変えていこうという気持ちがあれば、変わっていくことは可能です。


ハラスメントとカウンセリング‥

カウンセリングは、モラルハラスメント被害者への対策の1つです。モラルハラスメントの加害者自身が、受けた被害をモラルハラスメントとして認識していない場合もあります。そういった場合に、カウンセリングを行うことで被害者にモラルハラスメントの自覚を促すことができるのです。

モラルハラスメント自体を未然に防ぐこととは離れますが、カウンセリングはモラルハラスメントの現状を理解するための第一歩です。 

愛媛心理相談室のカウンセリングでは、モラハラ行為を変えていきたいと願う方が、自分自身の課題に取り組み、人間関係が良好になり、生きやすさにつながっていくようサポートしていきます。