繊細な人(HSP)‥
他人の何気ない一言が不安を生み、気になって仕方なくなる。光や雑音、臭いなどが気になって集中できない。そんな傷つきやすく敏感な性格の方は、HSPに当てはまるかもしれません。
HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソンの略で、人一倍繊細な気質を持つ人という意味になります。HSPは、アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。
研究によると5人に1人はHSPであり、周囲の状況や環境の変化にとても敏感に反応してしまうため、日常生活を送る中で生きづらさを感じることが多いと言われています。
HSPの原因‥
HSPの原因についてはまだ解明されていませんが、生物学的な素質、遺伝、元々の生まれ等によるものといわれています。そして、HSPの特徴である感覚過敏や感受性が強いのは偏桃体に原因があるといわれています。
偏桃体とはアーモンドの形をした神経細胞の集まりで、感情の処理の機能があります。HSPはこの偏桃体の働きが一般人よりも強いようです。これが感受性の強さや感覚過敏の原因ではないかといわれています。
こうしたことがあるので、HSPを病院などで医学的に治す、ということが難しいのが現状です。治すのではなく、HSPがより生きやすいように対処法を身に付けていくことが大事になります。カウンセリングも対処法の一つです。
HSPのチェックリスト
以下はHSPに関する23項目のチェックリストです。自分でHSPかどうかを確認できるセルフチェック方式になっています。
それぞれの質問項目に「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
① 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ。
② 他人の気分に左右される。
③ 痛みにとても敏感である。
④ 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる。
⑤ カフェインに敏感に反応する。
⑥ 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などにに圧倒されやすい。
⑦ 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい。
⑧ 騒音に悩まされやすい。
⑨ 美術や音楽に深く心動かされる。
⑩ とても良心的である。
⑪ すぐにびっくりする(仰天する)。
⑫ 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう。
⑬ 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)。
⑭ 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ。
⑮ ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつけている。
⑯ 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている。
⑰ あまりにもたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる。
⑱ 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる。
⑲ 生活に変化があると混乱する。
⑳ デリケートな香りや味、音、音楽などを好む。
㉑ 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している。
㉒ 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる。
㉓ 子どもの頃、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた。
合計得点: ( )
この診断テストで「はい」の数が12点以上の場合には、HSPである可能性が高いです。
もし自身がHSPかもしれず、それによってしんどいことが多いようであれば、カウンセリングを受けることをおすすめします。
(文献)ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (講談社 2000年)
HSPが元気になるために‥
繊細さんは人に優しく、細やかな気遣いができる人が多いです。だからこそ、ここで紹介したコツをうまく取り入れてストレスなく自分らしいままで生きていきましょう!
① 考え方の対処法‥
HSPは生まれつきの気質で、5人に1人はHSPといわれていますが、やはり少数派です。
そのため、周りからは「細かすぎる」「気にしすぎ」「打たれ弱い」などと言われ、「なんで、みんなが普通にしていることが私はできないのだろう」と自己評価を下げてしまいがちです。
もともと物事を深く考えすぎる癖を持っているので、自己評価(自己否定)を下げ始めるとネガティブな感情にとらわれてしまい、うつ病や適応障害を発症しやすくなります。
HSPは、その特性を知って生活することが大切です。HSPではない人には、HSPを理解することはできません。相談したところで分かってもらえず、さらに自己評価を下げてしまうだけでしょう。
自分の特性を知って人と付き合い、仕事を選び、生活していくことが大切なのです。
また、HSPは人の気持ちを汲むことが得意で、繊細な対応ができますが、相手も同じような気遣いができるとは限りません。
「自分とは違うのだな」ということを理解して過度な期待はせず、そしてなんでも言葉にしてよく話をすることが大切です。人に頼まれると断れず、人に何かを頼むのも苦手ですから、小さなことからお願いしたり、断ったりする練習をしていくとよいでしょう。
② 仕事の対処法‥
HSPは何にでもよく気が付いてしまってそれを放っておけず、しかも良心的でまじめな人が多いので、中途半端な仕事ができません。その上頼まれた仕事を断ることも苦手なので、損な役割を負わされてしまいます。
そして、周囲に機嫌の悪い人がいると緊張するし、怒られている人のことまで気になってしまい、心が苦しくなります。
一つの仕事に対していろいろなことに気付き、すべてのリスクに対処していくので、どうしても効率が悪かったり、複数のことを同時にできなかったりします。それよりも、一つのことを丁寧に深く考えながら行う方が得意なのです。
しかし、当然ですがその分、仕事の質は高く、リスクを回避できるので、大きな落とし穴に落ちることが少なくなります。
効率が悪いことやマルチタスクができないことで自己評価を下げるのではなく、仕事が丁寧でリスク回避能力も高い自分を逆にほめてあげてもよいくらいです。そして、これからは行うタスクを一つに決めて、それを丁寧にやっていけばよいのです。
③ 環境の対処法‥
HSPは生きづらさを感じ、へとへとになりながらも頑張っています。息を切らして歯を食いしばって、頑張って、頑張って‥ その結果、気が付いたときには身体に鉛を背負ったような重みを感じて思うように動けなくなっています。
朝、仕事の支度をしなくてはならないのに布団から出られなかったり、理由もないのに涙が出てきて止まらなくなったりすることもあります。それは体だけではなく、心が疲れている証拠です。心身のために休憩することや、ときには逃げ出すことも必要ですが、そうなる前に対策を取っておくことがより有効です。
周囲から刺激を受けすぎないように、環境を調整していきましょう。まずは、単純に物理的な刺激を和らげる工夫をしていきます。
五感が鋭すぎる人が多いわけですが、その中でも強弱がありますので、自分が普段どのような刺激に悩まされているかを思い返してみます。
視覚や聴覚、触覚などの刺激が強すぎるものは、日常生活で物理的に防御されるようにするだけで、ずいぶん楽になります。伊達メガネやサングラス、ヘッドホン、肌に優しい服などを取り入れてみましょう。
HSPの素晴らしい気質を生かそう‥
HSPは、次のような能力があると言われています。 どんなに優れた個性や資質を持っていても、自分自身が理解していなければ、それらを最大限に発揮することはできません。
相手の気持ちを察し、気を配ることはもちろん素晴らしいことですが、気を遣いすぎて自分自身が辛い思いをしては、生きづらさの解決にはならないでしょう。
HSPは生まれ持っての気質です。そのため、「HSPである」ということと上手につき合っていく必要があります。対処の方法としては、自分自身で限界を知ることです。その限界を超えそうになったなら、自分から「刺激の量を減らす」「刺激を予測する」などの行動を起こすことが、自分を守ることになります。
① 感受性が豊かで、直観がするどい。
② 人の良いところを見つけるのが得意。
③ 些細なことから喜びを感じられる。
④ 物事に人一倍感動し、人の幸せを心から喜ぶことができる。
⑤ 人の話を丁寧に聞くことができる。
⑥ 深く考えることが得意。
⑦ 人が気付かないことに気付き、改善することに長けている。
⑧ 良心的で真面目、決して無責任なことはしない。
⑨ 困った人がいると助けずにはいられない。
このようにHSPは、実は素晴らしい気質でもあるのです。自分の特性を知って、安心していられる環境にいてのびのびと仕事をしていけば、素晴らしい成果を発揮するはずです。
自己否定はやめて、ありのままの自分に誇りを持ちましょう。
たくさんの強みがあるのですから、それを生かせる環境で自由に全力を出していけばよいのです。自分のやりたいことを抑圧せず、心の声に耳を傾け、大切にすることで幸せに生きていくことができます。
HSPは、繊細で傷つきやすいため、経験した出来事がトラウマになって残りやすいところがあります。それを放っておくと、外に出るのが怖くなったり、必要以上に人との関りを恐れたりするようにならないとも限りません。
愛媛心理相談室では、HSPに関する生きづらさを抱えている方へのカウンセリングをおこなっています。HSPであることを変えるのではなく、人との距離の取り方や自分を守る方法について共に考え、少しでも生きることが楽しいと感じられるようにカウンセラーがお手伝いいたします。