感情に振り回される人たち

あなたは、感情的になって、周りの人に強い言葉や態度で接してしまったことや、感情がうまくコントロールできず、やるべきことに集中できなかったことはありますか?

自分の感情とうまく付き合う第一歩として、「事実と感情を分けて考える」というやり方があります。これは、考え方のバランスを取り、ストレスに対処する上でのポイントとなります。「事実と感情を分けて考える」を生活に取り入れるには、ストレスを感じたとき・嫌な気持ちになったときを例に、実践してみる良いでしょう。

例えば、「職場であいさつをしたけど、同僚から返事がなかった。きっと私は同僚に嫌われているんだ。一緒に仕事するのがつらいな‥」と思ったとします。このとき、事実と感情を分けると、以下のようになります。

【事実】→ 私が職場であいさつをした。同僚から返事がなかった。

【感情】→ きっと同僚に嫌われているから‥ 一緒に仕事するのがつらい。

ここで見てほしいのが(きっと同僚に嫌われているから)の部分です。これは、事実でしょうか?どうして、同僚はあいさつを返さなかったのでしょう?

もしかしたら、同僚は仕事に追われていて、あいさつどころではなかったのかもしれません。もしかしたら、私があいさつする声が小さくて、同僚に聞こえなかったのかもしれません。

どうしてあいさつを返さなかったのか、事実は同僚にしか、わかりません。でも、同僚があいさつを返さなかった理由をたくさん考えてみると、それに合わせて、自分の感情も変化するのではないでしょうか。

事実を変えることはできません。でも、考え方を変えることで、ストレスを減らし、感情を変化させることはできます。ここで、ストレスを減らすための考え方なども、一緒に考えていきたいと思っています。

「どうして」ではなく「どうすれば」で考える‥

考え方を変えられないときは「注意を向ける対象を変える」「状況を他の視点から考える」といった方法をとるといいでしょう。状況を他の視点から考えれば、ストレスの多い出来事を違う枠組みで見られるようになります。 

「どうして、あれほど悪いことが起こったんだろう?」と、くよくよ考えるほど不幸になります。それは多くの研究者たちが明言する結論です。

どうして自分は癌になったのだろう、どうして恋人にふられたのだろう、どうして就職できなかったのだろうと、頭のなかでネガティブな声に耳を傾けていると、思考の悪循環から抜け出せなくなります。

「どうして」とか「あのとき別の行動をとっていれば」という思考回路に陥ったら、「どうすれば」「何をすれば」などに変えてみるようにしてください。「どうすれば、気分を上向きにできるだろう?」「この状況を変えるために、いま自分はなにをすればいいんだろう?」といったようにです。

このシンプルなテクニックに大きな効果があることは、臨床心理学者たちも実感しています。心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ人はよく、「どうして」あんな恐ろしい出来事が起こったのかと繰り返し考え、ネガティブ思考から抜けだせなくなります。

過去の出来事が起こった理由にこだわるのをやめて、「どうすれば、また自分の人生を歩みだせるだろう?」と考えるようにすれば、ネガティブ思考のサイクルから抜けだせるようになるはずです。

「どうすれば」「何をすれば」という言葉とともに自分に問いかければ、ネガティブ思考を頭の外へと追いだし、ふたたび前進できるようになるはずです。

不安感情に振り回されない自分になる‥

不安はいろいろな場面で感じるものですが、それが強すぎると何か行動を起こそうとしたときに邪魔になる感情でもあります。その不安があるから何も出来ないし怖いと思う。それをうまくコントロールできればどれだけ楽だろうと思う人は少なくないと思います。

不安という感情は「自分の身の周りにあるリスクを察知する」ためには必用なものでもあるので決して不安を抱いてはいけないとかそう感じることが悪いとは言えません。

ただ、この感情が邪魔をして「自分は何も出来ない」「何をやってもうまくいく気がしない」というネガティブな状態でストレスを抱え続けることに問題があるのです。

では、この不安感情に振り回されることなくもっと楽に生活できる方法はないのでしょうか?それは「自分が何に対してどのような不安をイメージしているのか」を知り「それに対して対処できる自分を作る」というものです。

これが出来れば100%大丈夫というわけではありませんが、それまで不安な気持ちが邪魔をして前に進めずにいた状態からは脱出できます。

不安を客観的に捉えることで「不安感情に飲み込まれにくくなる」「振り回されにくくなる」ことは確かです。

不安に対処する自分を作るための方法はいたってシンプルなもので、まずは自分が何に対してどのような不安を抱いているのか、それに対してその先に何が起こるとイメージしているのかをかき出し、自分が不安を感じやすい状況や物事を知る。

そのあとにその物事に対して対処できる自分を作るというものです。その後は不安が原因でマイナスに考えがちな自分の思考をプラスに捉え直していけばおおよその不安には対処できるようになります。

これは認知行動療法の一つで、自分でできるものの代表的なやり方です。認知行動療法は自分で出来るようたくさんの書籍がありますが、もしそのようなもので「自分でやってみよう」と思っても最初からうまくいかないということもあるでしょう。

もし自分で挑戦してみたけれどうまくいかないとか、そもそも一人でやっていく自信がないということがあればカウンセラーに相談してみるのも方法の一つです。

認知行動療法はコツコツ焦らずに続けていくことが大切です。不安にさいなまれ「うまくいかないな」「つらいな」と感じたならば、まずは最初の一歩を踏むことで何かが変わるかもしれません。

感情コントロールが難しいのはなぜか? 

自分の感情のコントロールが難しいのはなぜでしょうか?ここでは、扱いにくい感情のひとつである怒りについて解説します。 


① 自分を理解できていない‥

自分自身を理解できていないと、感情のコントロールは難しいです。怒りの感情をコントロールするためには、自分の感情の起伏をきちんと理解する必要があります。

一般的には、自分の思いと異なることが起きた時、怒りの感情が現れると言われているので、自身がどういったときに怒ってしまうことが多いかなどを書き留めておくと、自分自身を理解できるきっかけとなります。


② 完璧主義である

完璧主義である人は、怒りの感情が現れやすいです。完璧主義の人は、自分が考える理想通りに物事が進まないと、イライラしてしまうことが多いです。

物事全てが理想通りには進まないことをあらためて理解し、自分にできること・できないことを客観的に判断することが重要です。


③ネガティブなことを引きずってしまう‥

過去に起こったネガティブなことをいつまでも引きずってしまうと、感情のコントロールができません。失敗に対する後悔や他人への恨みが自分の中にある限り、怒りの感情が治まることはありません。

失敗を自分の教訓にするなど、ポジティブな考え方に切りかえる努力が必要です。


④ ストレスを溜めこみやすい‥

ストレスを溜め込みやすい人は、感情のコントロールが難しいようです。イライラ・怒りなどをコントロールできず、感情の発散ができないため、ストレスとして溜め込んでしまうのです。

溜まったストレスをコントロールできないと、その感情を他人にぶつけてしまうこともあります。


⑤ よく眠れていない‥

よく眠れていない場合、感情のコントロールは難しくなります。感情のコントロールが上手な人でも、睡眠不足の時は、感情のコントロールができないことがあります。

睡眠が十分に取れていないと、脳がうまく働かないためです。安心に満ちた感情を作るセロトニンが、睡眠不足により脳内で不足することが原因であることも判明しています。


感情をコントロールするためのポイント‥ 

感情をコントロールするための7つのポイントを紹介します。 


① 深呼吸をする‥

嫌なことがあり、怒りの感情が現れたときは、その場で深呼吸をし、怒りが収まるまで数秒待ちましょう。すぐに感情を表に出してしまうと、他人に嫌な思いをさせてしまう可能性があるため注意が必要です。


② 怒りのポイントをよく見極める‥

怒りの感情が生み出されているポイントをよく見極めることが大切です。相手の立場に立って冷静に考えることで、怒る必要がなかったと気づけることもあります。怒りの感情をすぐにぶつけるのではなく、一度冷静になって考えることが大切です。


③ ポジティブな言葉で自分の思いを伝える‥

怒りの感情が出ても、相手と喧嘩にならないようにポジティブな言葉を選び、自分の思いを伝えましょう。「あなたのせいだ」「あなたが悪い」などといったネガティブな発言は控え、他人の気持ちを思いやる優しさを持つことで、良好な人間関係が築けます。


④ 完璧な理解者はいないと考える‥

人の考え方、理解する能力などには個人差があり、自分が考えていることを、完璧に理解してくれる人は、ほとんどいないと考えると気持ちが楽になります。他人に対して自分と同じレベルを求めるべきではないと気づくことが大切です。


⑤ 物事を引きずらないための自分のルールを作っておく‥

物事を引きずらないための自分のルールを作っておくと、感情がコントロールしやすくなります。どんな時に怒りやすいかなど、自分の怒りのメカニズムを把握し、自分の感情をパターン化しておくことで、物事を長い時間にわたって引きづらなくなります。


⑥ 自分を癒せることをする‥

感情をコントロールするために、自分を癒せることをしましょう。映画を見る、漫画・小説を読むなど好きなことをしたり、好きな食べ物を食べたりすることで、ストレスを発散できます。過去に起きた嫌なことや、イライラの感情も忘れることができます。


⑦  睡眠を十分に取る‥

不規則な生活は控え、睡眠を十分に取るようにしましょう。感情をコントロールする方法を実践する前に、日々健全な体をつくっておくことが大切です。睡眠が十分取れていると、気持ちも前向きになり、何かあってもポジティブに物事を考えられます。


感情をコントロールするために毎日できること‥ 

感情をコントロールするために毎日できることを紹介します。 


① 他人の気持ちを考える習慣をつけよう‥

他人の気持ちを考える習慣をつけましょう。ネガティブな感情は、本能から生み出されます。人の気持ちになって物事を考えることで、自分勝手に解釈して怒っていたことがおさまることは多いです。自己中心的な感情を押さえ、他人の気持ちになって考え直してみることが大切です。


② 気持ちを切り替える努力をしよう‥

気持ちを切りかえるための努力を行いましょう。怒りの感情は6秒経つとおさまるといわれています。何かにイラっとした時は、一旦その場を離れ深呼吸したり、散歩したりするなどして、気持ちを切り替えることが大事です。


③ ひとつの考え方にこだわらない‥

ひとつの考え方にこだわり過ぎず、さまざまな考えを取り入れる、柔軟な思考を心掛けましょう。ひとつの考え方にこだわりすぎると、他人の意見が受け入れられずイライラしてしまいます。絶対にこうあるべきだと断定する考え方を見直すことが必要です。


カウンセリングで出来ること‥

「こんな自分が嫌だけど、どうしたらいいのか分からない 」「こんなこと誰にも相談できない 」「怒りや憎しみの感情をコントロールできるようになりたい 」「怒りや憎しみの感情がコントロールできたら、もっと人間関係も楽しくなるのではないか 」

こんな自分を変えていきたい こんなこと、感じていないでしょうか? モヤモヤと一人で考えていると、悪循環に陥り、周囲との関係性をさらに悪化させてしまっているかもしれません。 

カウンセリングでは、対話を通して、あなたにあった感情コントロールの方法を一緒に探していきます。 まずは、状況ごとに怒り・憎しみの高さが違うかどうか、どんな状況で感じやすいかなど、怒り・憎しみが生じやすい状況の傾向を探ってみましょう。