アルコール・ギャンブル依存症を克服する‥

「依存」はとてもメジャーな日常用語であり、どなたでも一度は耳にしたことがあると思います。 この依存症が長く続くと周囲との人間関係が破綻したり、仕事ができなくなったりすることで経済的な困窮に陥るケースも多く、通常の社会生活を送ることができなくなります。

また、アルコールの多飲や食生活の乱れなどから健康を害するケースも多く、身体的・精神的なダメージを引き起こしやすいのも特徴です。

愛媛心理相談室にも、毎月数名の方から、アルコール、薬物、たばこ、などの特定の物質や、ギャンブル、恋愛、買い物など特定の行動をやめることができなくなってしまう精神依存状態で来られる方がいます。

依存症は特定の物質の摂取や行動を続けることで脳に変化が生じることが原因で発症すると考えられており、さまざまな支障をきたしているものの本人は依存症に陥っていることに気付かないケースもあります。

また、依存症は薬物療法、精神療法など多角的な治療が必要となり、克服できたとしても再発するケースは少なくありません。治療には患者本人の努力だけではなく、家族など周囲の人の支えも必要です。

依存症の種類‥

もっとも代表的なアルコール依存、ギャンブル依存などに加え、最近ではインターネット依存、無料通話アプリ、「LINE」依存などさまざまなシーンで依存についての問題が取り上げられています。

しかし、医学における「依存」(以下では「依存症」と呼ぶことにします)となると、これはその一部に限られます。実際、この依存症とはどのような病気なのでしょうか?

依存症は大きく分けて、「特定の物質」に精神的な依存が生じるタイプ「特定の行動」にのめり込んでしまうタイプに分けられます。

特定の物質に対する依存は、アルコール依存症、薬物依存症、ニコチン依存症などが挙げられます。一方、特定の行動に対する依存は、ギャンブル依存症、買い物依存症などが挙げられます。

依存症には主に 2種類あります ‥

依存症とはやめたくてもやめられない状態に陥ることですが、その種類は大きく分けて2種類あります。前述のおとおり「物質への依存」と「 特定の行動」です。 


物質への依存‥

アルコールや薬物といった精神に依存する物質を原因とする依存症状のことを指します。依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなり、次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます(一部の物質依存では使う量が増えないこともあります)。 


 プロセス(精神)への依存‥

物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。どちらにも共通していることは、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられない、いつも頭から離れない、などの特徴がだんだんと出てくることです。


依存症は自覚しにくい、認めにくい病気です‥

日常生活を送っていく中で、ついついパチンコや競馬などのギャンブルにお金を使いすぎたり、仲の良い友達や仲間と連日お酒を飲み過ぎたり。こういった行動は、誰にでもたまにある事だと思います。

しかし、こういった行動がたまにではなく常習化し、止めようと思っても止められない、しないと落ち着かない、虚脱感に襲われるなど、明らかにその行動が日常生活に支障をきたす状態になってきますと、自らの意志の力だけではコントロールすることができなくなる状態「依存症」の可能性があります。

「依存症」=「コントロールの障害」‥

やめようと思ってもやめられない状態、そして、自覚を拒んでしまいがちな病気なのです。

「依存症」と聞いた時、一般の人は自分には無縁な病気ではと思うでしょう。しかし、依存症になるきっかけは意外と私たちの身近に潜んでいます。もしかしたら、私たちも依存症になる確立は十分にあるといえます。

例えば違った視点で見ると、夫、妻に金銭、精神的依存を過度にする、彼氏彼女に依存する恋愛依存、甘いものを欲する糖質依存なども、一見アルコールやギャンブルとは全く違う違ようの思いますが、実は共通するものと考えてもよいと私は考えています。

依存症を疑われた時、「私ならいつでも止められる」と軽い気持ちで捉えるとともに、依存症は「意思が弱いからだ」と恥ずかく思い、自分は依存症なんだと受け入れることを拒んでしまいがちです。依存症は意思の強弱の問題ではありません。専門的な治療が必要な「病気」だということを知ってほしいのです。

問題は誰かが困ることです‥ 

アルコール、薬物、ギャンブル等、依存しているものは人それぞれですが、依存症に共通することは、家族とのケンカが増える、生活リズムが崩れる、体調を崩す、お金を使いすぎるなど何かしらの問題が起きているのにも関わらず、ほどほどにできない、やめられない状態に陥っているということです。

このような状態にある場合、依存症と同じように対応を考える必要があると思います。依存症のことを考えるときに大事なのは、そのことによって本人や家族が苦痛を感じているのかどうか、生活に困りごとが生じているのかどうかということです。

本人や家族が苦しんでいるのであれば、それは改善が必要な状態ですので、依存症に関する正しい知識を身に付け、適切な対応を早めにとっていくことが大事です。

依存症って何が問題なのか?

依存対象のことを大事にしすぎることで、自分や家族の生活に不都合が生じます。 飲酒や薬物使用、ギャンブルなどの行為を繰り返すことによって脳の状態が変化し、自分で自分の欲求をコントロールできなくなってしまいます。 社会生活をしていく上で優先しなければいけない色々な活動を選択することができなくなっていくのです。  


① 自分や家族の生活に不都合が生じる‥

アルコール、ギャンブルなどの行為を繰り返すことによって脳の状態が変化し、自分で自分の欲求をコントロールできなくなってしまいます。

だんだんとアルコール、ギャンブルなどの行為を優先的に考えるようになってしまい、他のことがおろそかになり、仕事や日常生活を送る上で優先しなければいけない色々なことを正しく選択することができなくなっていくのです。その結果、自分や家族の健全な社会生活に悪影響を及ぼす可能性があります。

【悪影響の例】

□ 睡眠や食事がおろそかになり、健康を害すことになる‥

□ 嘘の上塗りで、家族との関係を悪化させる‥

□ 仕事や学校を休みがちになり、続かなくなる‥

□ 隠れて借金をしたり、お金を工面するために手段を選ばなくなる‥


② 身体や心に悪影響を及ぼします‥

私たちは、生活の中でいろいろなことを選択しながら生きています。

例えば、私たちは毎日、無意識に食べること、寝ることや大切な人と楽しく過ごすことを優先(選択)して生きています。なぜなら、人間が健康に生きていくために毎日適切な食事をとること、毎日適切な睡眠をとることや大切な人と楽しく過ごすことが必要なことだからです。

しかし、依存症になり、 脳が報酬(ご褒美)を求めてエスカレートした状態になると、 正しい選択ができなくなり、生活の中の優先順位が変わってきます。

睡眠や食事をおろそかにしたり、家族との大切な時間を削るようになったりと、これまで健康に生活していくために優先していたことよりもアルコールやギャンブル(賭け事)などを優先してしまい、結果、本人の身体や心に悪影響を及ぼしてしまいます。

さらに依存症が進むと、アルコールやギャンブルなどのために仕事を休んだり、借金をしたりするようになることもめずらしくありません。

アルコール、時には薬物を使用したり、ギャンブルをしたりすることで、一時的にストレスが発散できたり、リラックスできたりするのですが、加減ができなくなると、その代償として、自分の健康な身体や心、家族関係までが損なわれていってしまうのです。


③ 周りの人の生活に悪影響を及ぼします‥

依存症は、適切な治療をしないと、量や頻度がだんだんと増えていく進行性の病気です。
依存状態が進んでいくと、本人だけの問題ではおさまらず、家族や周りの人を巻き込んでいきます。

家族や周囲の人との人間関係よりも、アルコールやギャンブルなどを優先してしまうために、家族に嘘をついたり、借金をしたり、飲酒や薬物使用、ギャンブルなどしていることを隠したりする行為は、よくある依存症の症状です。

依存症は病気であるため、医療機関に頼ることやカウンセリングを受けることで解決に向かうことができる問題でもあります。しかし、本人は病気という自覚がない(または認めない)ことが多く、家族も正しい知識がないままに、家族がこんな状態では世間に白い目で見られる、恥ずかしい、周りにバレたらどうしようという思いから、誰にも相談できず、なんとか本人の起こした問題の尻拭いをし、隠そうとしてしまいます。

依存症は意思で特定の物質や行為をやめたり、減らしたりできなくなる病気ですので、本人の意思のみで治すことは相当に難しいでしょう。むしろ、適切な対応をしなければ、少しずつ症状は悪化していくので注意しなければいけません。

本人のつく嘘に傷つけられたり、本人の代わりにお金を工面して借金を返済したり。そのような生活を続けているうちに、本来望んでいた家庭生活、健康的な生活を送ることが難しくなっていってしまうのです。


なぜやめられないの? 

それは、コントロール障害(自分の意思でやめられない病気)になってしまっているからです。人間は誰しも、不安や緊張を和らげたり、嫌なことを忘れたりするために、ある特定の行為をすることがありますが、それを繰り返しているうちに脳の回路が変化して、自分の意思ではやめられない状態になってしまうことがあります。

これが、依存症という病気です。周囲がいくら責めても、本人がいくら反省や後悔をしても、また繰り返してしまうのは脳の問題なのですから、決して「 根性がない」とか「意志が弱いから」と責めるのはよくありません。

依存症は、誰でもなる可能性があり、特別な人だけがなるわけではありません。依存症は特定の行為を自分の意思でやめたり、減らしたりできない病気なのです。それをわかってください。


① 脳の仕組みを知ることです‥

なぜ自分の意志ではやめられない状態になってしまうのか。その鍵は脳にあります。まずは脳の仕組みについて、依存対象物質の一つであるアルコールの摂取を例にしてお話します。

私たちが物事を考えたり感じたりできるのは、脳の中で神経細胞がさまざまな情報伝達を行っているからです。しかし、アルコールが体内に入ると、脳に侵入し、情報伝達の働きに影響を与えます。アルコールだけでなく、薬物でも同様ですが、これらの物質を摂取すると、私たちの脳内ではドパミンという快楽物質が分泌されます。

この快楽物質が脳内に放出されると、中枢神経が興奮し、それが快感・喜びにつながります。この感覚を、脳が報酬(ご褒美)と認識すると、その報酬を求める回路が脳内にできあがります。

アルコールを例にしましたが、ギャンブル等で味わうスリルや興奮といった行動でも、同じように脳の中で報酬を求める回路が働いているのではないかと言われています。


② エスカレートするのは脳の仕業が影響している可能性がある‥

脳内に報酬を求める回路ができあがり、アルコールを体に取り込む行動が習慣化されると、快楽物質が強制的に分泌されることが繰り返されます。そうすると、次第に喜びを感じる中枢神経の機能が低下していきます。

快感・喜びが感じにくくなるにつれ、以前のような強い快感や喜びを得ようと、ますますアルコールの量や頻度が増えていきます。すると、ますます快感・喜びは感じにくくなり、焦燥感や不安、物足りなさばかりが増していく…という悪循環に陥っていきます。

いったんこのような状態に陥ると、ほどほどにできなくなったり、ほどほどが続かなくなったりしてしまい、もはや自分の意志でコントロールすることは非常に困難になります。

脳が報酬を求めてエスカレートしているため、本人がやめたいと思ってもどうにもならないのです。意志の弱さや性格の問題でもなく、もちろん最初から依存しようと思ってなるものではなく、脳の仕業なのです。条件さえそろえば誰でも依存症になる可能性があり、特別な人だけがなるわけではないのはこのような理由からなのです。


依存症って治るの?

依存から抜け出す(回復)ことは可能です。重ねて申し上げますが、依存症になると、 アルコールやギャンブルなど をほどほどにできなくなるといわれています。しかし、様々な助けを借りながら、止め続けることでアルコールやギャンブルなどに頼らない生き方をしていくことは可能です。

依存症は、糖尿病や高血圧のような慢性疾患といわれています。そのため、しっかりとした付き合い方が大切です。もし回復の途中で止め続けることに失敗したときは、焦らず、そこからまた止め続けることを再開する繰り返しが大切です。

止め続けるためには、正直に自分の気持ちを言える場所があることや、孤立しないことが大切です。依存症は誰でも陥る可能性のある病気であり、決して恥ずかしいものではありません。本人や家族だけで抱え込まないで、早めに専門の機関、カウンセラーに相談してください。


①「止め続ける」ことが大切‥

いったん報酬(ご褒美)を求める回路が脳内にできあがってしまうと 、脳を以前の状態に戻すことは難しいと言われています。しかし、様々な助けを借りながら回復に向かっていくことはできます。

止め続ける生活を続ければ、問題のない社会生活を営むことも可能となります。止め続けるにはアルコールやギャンブルなどをしたいときにどのように避けるか、飲酒や薬物使用、ギャンブルなど以外のことをする時間をどのように増やすかが大切なポイントになるのです。


② 一人で抱え込まないようにする‥

依存症とは、脳内に報酬を求める回路ができあがり、コントロール喪失に陥ってしまい、 ほどほどにできなくなる脳の病気と言われています。

意志や気持ちで解決しようとしてもうまくいきませんし、何度やめようと決意しても条件が揃うとまたやってしまうということを繰り返します。また、家族が何かをしたから止めさせられるものでもありません。

対応法としては、専門医療機関やお近くの 保健所、精神保健福祉センターといった行政機関に相談したり、依存症を専門するカウンセラーから適切なアドバイスを得ながら回復に向かう方法があります。

また、依存症の問題を抱えた人同士でミーティングや情報交換を行いながら、回復を目指していく自助グループに参加するという方法やリハビリ施設を利用する方法もあります。保健所や精神保健福祉センターに相談すれば、自助グループやリハビリ施設についても教えてもらうことができます。


依存症かもという人がいたらどうすればいいの?

「叱責」や「処罰」ではなく対処法を学ばないといけません。そして周りにも相談しましょう。依存症は、欲求をコントロールできなくなる病気です。しかし本人は自覚がなく気づかないため、何度も気持ちだけでコントロールしようとして失敗します。

そのため、周囲がいくら根性論で本人を責めても、問題は解決しません。叱責や処罰だけでは、むしろ状況を悪化させてしまいます。

本人自らが回復の必要性を自覚するまでには時間がかかることも多いため、まずは、周囲の方が専門の機関に相談して、適切なサポートのしかたを知ることから始めてください。


① 依存症を正しく理解した上で、本人に接することが大切です‥

ほとんどの場合、依存症の当事者は、自分は依存症だと気づくことはできません。そのため、明らかに問題がある状態であっても、やめようとすればやめられる、あの人に比べたら大丈夫という発言をし、その問題に向き合えないケースが多いようです。

また、隠れてやっているのに、もうやめたと嘘をついたり、もうやらないという約束を破ったりしてしまうのも依存症の典型的な症状です。本人も自分の意思ではやめられない病気になっているということを自覚できていないのです。

依存症当事者に対してやめられないことを責めたり、嘘や約束を破られたことを怒ることで本人を追い詰めると、本人はストレスを感じ、それを解消しようと、余計にアルコールやギャンブルなどに頼るようになっていくことが多いといわれています。

このような場合、本人を追い詰めずに、自分の気持ちを伝えることが大切です。借金を肩代わりする、本人の代わりに会社へ休みの連絡をするなどと、本人が起こした問題の尻拭いをするのは逆効果です。やらないでください。

なんとか愛情で立ち直らせたいと家族が献身的に尻拭いをすると、本人は自分の問題に直面することなく、アルコールやギャンブルなどを続けていくことになります。


② 勇気をもって、専門の機関に相談しましょう‥

依存症は 脳の病気であるため、家族などの周囲の人たちでなんとかしようとしても、問題は解決しません。適切な接し方を知っていないと、状況をますますこじらせてしまうこともあります。

本人に対してどのような対応をすればいいのか、家族自身のストレスを軽減するにはどうすればいいのかなど、きちんとした知識を得ることは非常に大切です。

そこで、自助グループや家族会に参加することや、地域にある保健所や精神保健福祉センターといった専門の行政機関に相談する方法があります。

行政機関に 相談するにあたっては、最初から本人を連れていく必要もありません。連絡を取ると、適切な対処法についてアドバイスをもらうことができます。

また、情報を知る、悩みを解決するという観点では、依存症の家族を持つ人たちが悩みを分かち合い、共有し、連携することでお互いを支えあう家族会に参加してみるのも一つの方法です。保健所や精神保健福祉センターに相談すれば、家族会などについても教えてもらうことが可能です。

家族会に参加することや、専門機関で正しい対処法を聞くことは恥ずかしいことではありません。自分達だけで悩まず、専門の機関に相談しましょう。


克服するには、まずは「自覚」すること‥

「依存症」は一度発病するとなかなか止めることができない病気ですが、治らない病気ではなく、治りにくい病気です。そのためにも、まずは「依存症」であるかどうかの医師の診断が重要になってきます。

「依存症」であるかどうかの診断をすることで、治療可能な病気であることを「自覚」する事ができ、治療に進むことが可能となります。

また、依存症は「家族を巻き込む病気」としても知られています。そういった事を踏まえ、愛媛心理相談室ではご家族からのご相談を受け付けると共に、ご家族向けにもカウンセリングを行っています。

ご家族も依存症についての正しい知識を持ち、本人と一緒に心の改善に取り組むことを「自覚」をする事で、カウンセリングの効果は変わってきます。

依存症回復とカウンセリング‥

依存症から回復するには、まず、自分を偽るのをやめ、誤魔化さないことことです。自分が陥っている状態を素直に認め、何か手を打たなければ逃れる道はないと自覚することです。そして他者とのつながりを取り戻すことがとても重要な鍵となります。

回復のプロセスは、一直線に進むのではなく、何度も後戻りすることがあります。また一人で取組むのはとても難しいものです。医師の診断(投薬)とカウンセリングを利用しながら、自分も他者も大切にし、人生に意味を見いだせるようになった時に、ようやく出口が見えてきます。

愛媛心理相談室では、依存症に苦しんでいるご本人や、家族が依存症を抱え悩んでいる方へのカウンセリングを通じて、依存症と向き合う手助けをし、克服していくためのサポートをしておりますので、家族、身近な人でアルコールやギャンブル依存症の方がいれば早めにご相談ください。