ストレスが限界に達していると感じたら‥

ストレスを感じると、体や心、行動にはさまざまな変化が起こってきます。少しの不調なら大丈夫と放置してしまうと、状態が悪化し治りにくくなることもありますので、ストレスで辛い、苦しいと感じたら早めに専門医の受診を受けるか、カウンセリングを受けてください。

 そういいながらも、今の状態はストレスによる不調なのか、体調不良なのか、自分で判断できないと言う方もいらっしゃるでしょう。そこで、ストレスが限界にきているときのサインやストレスが原因の病をご紹介していきます。 自身の健康のためにしっかりとチェックし、思い当たるサインがあれば早めに対応していきましょう。

ストレスを感じているときに表れるサインにはさまざまな例があります。気分の落ち込みや考え方の変化といった心に表れるものや、睡眠や腹痛など体に表れるもの、飲酒が増えるなど行動に表れるものまで多種多様です。では、心、体、行動に分けてストレスが限界にきているときのサインを見ていきましょう。

ネガティブ思考から逃れられない‥

気分が落ち込んだまま物事を楽しめないと感じる場合「うつ病」の初期症状である可能性があります。うつ病のサインとして、これまで好きだった事にも喜びを感じられなくなることが挙げられます。

また、悪いことばかり考えてしまい、必要以上に自分を責めたり辛く感じたりすることも特徴です。 通常であれば、気分が沈むきっかけを生んだ出来事が解決すると、少しずつ気持ちが上向きになるものです。状況が好転しても気持ちが回復しなかったり、良いことがあっても気分が晴れなかったりする場合は要注意といえます。

何をしても楽しく感じず、常に気分が落ち込んでいる状態が続くようであれば、「うつ病」を疑って早めに対処をするように心がけてください。

「こころ」と「体」のアラーム!

ストレスが限界に達した場合、限界に近い場合、心や体に「アラーム」ともいえるさまざまな「前兆」が現れます。「私は大丈夫」「つらいのは自分だけじゃない」そんな人は頑張り過ぎに要注意です!下記に、強いストレスが原因で起こる症状について3つに分けてご紹介します。


①  心のアラーム‥

ストレスが限界にきているときの心のアラームは主に次の5つの状態です。

→ イライラする

→ 気分が落ち込む

→ 涙が出る

→ 気力が出ない

→ 集中できない

ふだん通りの生活をしているのに、ちょっとしたことでイライラしたり攻撃的な気分になったりする場合は注意が必要です。 また、いつものように明るい気持ちになれず落ち込んでしまう、といった変化が表れることもあります。 

悲しい、寂しい、不安といったさまざまな感情から涙が出る、涙が止まらない、などもストレスが限界にきているときのアラームと考えてよいでしょう。 時として職場などで突然泣き出してしまうケースもあります。 

今までできたことに対してやる気が出ない、今まで興味があったことに対して興味を失ってしまった、空虚感に包まれる、といったケースにも注意が必要です。 集中できない、ボーッとしてしまう、物忘れが増えた、といった変化が表れることもあり、これらが仕事や会議などに支障をおよぼすこともあります。


②  体のアラーム‥

ストレスが限界にきているときの体のアラームとしては主に次の5つのような状態です。

→ 睡眠の変化(眠れない、朝起きられない)

→ 食欲の変化(食べたくない、食べすぎる)

→ お腹の不調(胃痛、下痢や便秘)

→ だるいなどの疲労感が取れない

→ 頭痛や肩こりが取れない

睡眠や食欲は健康のバロメーターです。 疲れているのに寝つけない、眠りが浅く夜中に何度も起きてしまう、朝起きるのが辛くなった、などの変化はストレスが限界にきているサインといえます。 

また、食欲の変化もストレスによるサインとして代表的です。食欲がわかない、食事が楽しみと感じないといったアラームや、それとは反対に、空腹を満たすためやストレスを発散するために食べ過ぎてしまうケースもあります。 下痢や便秘など、おなかの調子がよくないといった症状も、気をつけておきたいポイントのひとつです。 胃痛や吐き気などの不調を感じる場合もあります。 

だるくて体を動かしたくない、つねに疲労感を感じる、といった場合も注意が必要です。 頭痛や肩こりも見逃さないよう気をつけましょう。


③ 行動のアラーム‥

ストレスが限界に達したときの行動のサインは次の3つの状態です。

→ お酒やタバコの量が増える

→ 仕事のミスが増える

→ 人付き合いを避ける

ストレスを感じると、それを発散するためにお酒を飲む回数や量が増えることがあります。タバコも同様です。 集中できない、気力がわかないといった変化から仕事などでミスが増える場合もあります。 

また、家にこもりがちになったり、人と話すのを避けたりするようになることもストレスで限界を感じているときのアラームのひとつです。


ストレスが限界なのに見逃してしまう理由‥

周囲から見れば明らかに大丈夫ではないのに「自分は大丈夫」「まだ頑張れる」と思い込み、無理をしてしまう人は少なくありません。

なぜ、ストレスが限界に近いのに見逃してしまうのでしょうか?それには、2つの理由が考えられます。

① ストレスフルな環境にいる自覚がない、麻痺している

② 「つらいのは自分だけじゃない」と考え我慢してしまう

それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。



① ストレスフルな環境にいる自覚がない、麻痺している‥

人間関係の難しさや働き過ぎなど、ストレスがかかり続けている状態が当たり前になると、それが「日常」のようになってきます。すると感覚が麻痺し、自分がストレスフルな環境にいる自覚がなくなってしまうのです。

また、ストレスに押しつぶされそうになっている場合でも、環境を変えるのが難しいこともあります。苦しい中でなんとかやるべき業務をこなすため、感情に蓋をして頑張り続けているケースもあるでしょう。


② 「つらいのは自分だけじゃない」と我慢してしまう‥

他の人の感情に寄り添える優しさを持っている人や、目の前の仕事をこなさなくてはという責任感が強く真面目な人は、ストレスを限界までため込んでしまいやすい傾向があります。

「他の頑張っているいる」「つらいのは自分だけじゃない、だから自分も頑張らなくては」と、つらい気持ちに無理をして頑張ってしまいがちです。これが積み重なると、精神的にも肉体的にも負荷がかかり、限界を迎えてしまいます。

うつ病にならないために気を付けること‥

「うつ病」にならないために、具体的には何に気を付けたらいいのでしょうか? 自分の人生を自分でコントロールするためにも、以下の習慣をぜひ取り入れてみてください。

うつ病の予防には、適切なストレス管理、健康的な生活習慣、十分な睡眠、バランスの取れた食事が重要です。リラクゼーションやマインドフルネスなどの技法を取り入れてストレスを軽減させます。社会的なサポートやコミュニケーションを強化し、孤立感を減少させる。ライフスタイルを維持することが重要です。


① 生活習慣を整える‥

暴飲暴食や偏食、乱れた生活習慣は、心と体に負担をかけます。生活習慣を整えるためにも、早寝早起きや定期的な運動、十分な休養は大切です。 十分な休養がとれているかどうか、1週間や1日のはじめと終わりに確認してみることからはじめましょう。 

自分の体にはどれくらい疲労があるのか、どれくらい休めば元気になるのか、また、どれくらい活動できるのか、自分の体の状態を把握できるのが理想的です。生活習慣を整えることが大事です。


② ストレスを溜めない生活を心がける‥

まずは、身体面そして精神面の両方で、ストレスを溜めない生活を心がけてください。 身体面でいうと、疲れがとれにくかったり、肩こりや胃腸の調子が悪かったりなどの症状がみられたら、早めに休養をとりましょう。

精神面では、イライラする、悲観的になるなどの気分が落ち込むことがあれば、早期に察知してリラックスする時間をとりましょう。 知らぬうちに、ストレスが高まり、結果的にうつ病の要因となってしまうケースもあります。時折、自分の生活を振り返る時間を確保し、ストレスを溜めないようにすることが大切です。


③ 食生活を見直す‥

「うつ病」の原因については未だ研究段階にありますが、脳内の「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質が減少していることが原因になっているのではないかといわれています。 そのため、セロトニンを生成する「トリプトファン」を含む食品を、ふだんから摂取することも大事です。

例えば、肉類、牛乳・チーズなどの乳製品、納豆などに多く含まれているといわれています。 栄養の偏りに気を付けながら、多様な食品をとり入れ、ふだんからバランスのよい食生活を心がけてみましょう。


④ ON・OFFを意識する‥

ずっと緊張状態が続いてしまうと、メンタルが不調となります。仕事や育児などで働き詰めの状態であったり、学校と習い事で休む時間がなかったりする方は、1日30分でもよいので、オフの時間をもつように意識しましょう。


⑤ 趣味をつくり楽しむ‥

趣味があることで、仕事や学業などのストレスを受けたときに救いとなります。趣味には「自己肯定感(自尊感情)を高める」「気分転換になる」「仕事や学業以外で他の人とつながるきっかけになる」といったプラスの面があります。 

そして、自分が所属するコミュニティや人間関係でつまずいたときに、自分の心を救ってくれるのが趣味の人間関係であるケースもあるのです。


⑥ ポジティブな自分を意識する‥

同じ事象が起きても、捉え方は人によって異なります。 例えば、コップに水が半分あるときに「まだ半分もある」と思う人と、「もう半分しかない」と思う人がいます。 

自分をラクにする思考回路をもつ人がいる一方で、自分を追い込んでしまう思考回路の人もいます。 後者の場合、自分を過度に責めたり、周りのことについて被害的になったり、うまくいかないと諦めたりといった傾向にあります。

マイナスパターンの思考が、さらに「うつ状態」を悪化させてしまうのです。ポジティブな思考回路をもつためにも、否定的な感情がでたときに都度、立ち止まることをおすすめします。 

「ポジティブだったら、どう考えるか」と想像してみるのです。 すぐにポジティブな思考回路をもつことは難しいですが、ポジティブな捉え方があることに気付き、自分の考えと比べることで、ネガティブな感情を和らげる働きが期待できます。


一人で悩まず早めに相談してください!

そして何よりも、ひとりで悩まずに、誰かに相談をしてみてください。 ひとりで悩み、考え抜くことにはかなりのエネルギーを要しますし、限界があります。 身近な医療機関、カウンセラー、あるいは企業内の産業医などに相談してみましょう。 相談内容を整理しておく必要はなく、誰かに悩みごとや話を聞いてもらうことが大切です。

また、インターネットで検索すると、メンタルヘルスなどに関する自己チェックシートなども簡単に見つけることができます。 セルフチェックを行い、気になる項目があれば、早めに医師の診察をうけることが大事です。

うつ病を放置すると以下のようなことが起こる場合があります。

① 仕事や人間関係に支障が出る

② 最悪の場合自殺に至る

自然治癒力でも治るケガや風邪とは違い、「うつ病」を放置してしまうと、適切な治療をしない限り多くの場合で症状が悪化していきます。 

初めは仕事や家事、人間関係に問題なかった場合でも、「うつ病」が進行すると共にイライラや不安、焦りが募り、集中力の欠如からミスが増えるなどの症状が現れることで、仕事や人間関係にも影響を及ぼしていくでしょう。

 虚無感が膨らみ「自分なんて存在しないほうが良い」と自殺に至ることもあります。「うつ病」には「症状固定」という概念があり、発症した「うつ病」を放置すると、それが自分の中で当たり前になり、症状が固定されてしまいます。 

そのため、放置してしまった「うつ病」は、治療の成果がなかなか上がらなかったり、 治療期間が長期化したりしてしまうのです。「うつ病」の悪化や治療を長引かせないためにも「うつ病」の早期発見・早期治療が大切といえるでしょう。