自傷行為を克服する

あなたの代わりはどこにいません。自分の心と体は一番大切にすべきものです。それがわかっていても、分の体だからこそ傷つけずにはいられない、その気持ちは痛いほどわかります

では、自傷行為とはどのような時にするのでしょうか? 自傷行為に走らせる背景には一体何があるのでしょうか? ここで少し目を向け考えてみたいと思います。

自傷行為には、切ったり、焼いたり、殴ったり、打ったりなどがあります。自傷行為は、心理的なストレスや精神疾患などによって引き起こされると言われます。

一時的な痛みによって、自分自身に集中することで、安心感や解放感などを感じることができますが、長期的には身体的・精神的な健康に悪影響を与えるよとは間違いありません。

自傷行為は医学的には「自殺は意図していないが、故意に自分を傷つける・害する行為」と定義されています。しかし、自殺の意図は無いとは言うものの、その線引きはとても難しいのです。

「リストカットぐらいで死にはしないだろう」という声も聞かれますが、それは大きな誤解です。数として多くはありませんが、「死に至る自傷行為」も確実に存在します。また、薬物やアルコールの乱用、摂食障害等「間接的な自傷行為」とされるものもあります。

あなたは、助けを求めるのが苦手だったり、大切な人からの助けの申し出を断ってしまったり、あえて困難な道を選び、自分で自分を追い詰めていませんか?「助けてもらえない!」と思っているのは、あなたの思い込みなのです。


私はカウンセラーとして、あなたの気持ちや考えを、あなたの立場になって理解していきます。あなたは、自分の想いを自分のペースでゆっくりお話しください。それを行っていくうちあなたの心の傷が少しずつ癒えていきます。

それにつれて、これまで抑え込んできたり、気づかなかったりしたさまざまな想いや、さまざまな自分に、無理なく向き合ってゆくようになります。そして、自分でも気づかなかった思いや感情を発見して、どんどん自分を取り戻していきます。

それが進むにつれて一歩ずつ、自分自身のことを大切に思えるようになります。それにつれて、心が軽くなったり、生きることが楽になったり、より前向きな思いが湧いて来たり、人間関係の苦しみが減っていくようになります。

カウンセラーと対話を重ねるていくことで、心の奥にあって気づいていなかった、マイナスの信念にも気づいて行くことができます。

自傷行為は自殺行為ではありません!

当相談室には、ご家族やパートナーからこんなご質問をいただくことがあります。 「リストカットを続けてしまうのは何を目的としているんでしょうか?」「 自殺が目的なのでしょうか?」 

よく誤解されるのですが、自傷行為というのは自殺とは全く異なるものです。自殺が「死ぬための行為」だとするなら、自傷はむしろ「生きるための行為」と理解してほしいですね。

自傷行為をしてしまう人は、あまりにもつらい経験や日頃の強いストレス、また、寂しさ、孤独、怒りなどの感情を抱えており、そのしんどさを少しでも和らげたいという思いから行動に移してしまうのです。その気持ちをわかってあげてください。

苦しい気持ちを自傷行為で和らげることができるんだろうか?

これは科学的に証明されていて、自傷行為をすることで脳内麻薬が分泌されるのです。すると、一時的につらい、苦しい気持ちが和らいだような感覚になるのです。いまだに自傷行為に対する誤解はとても多く、社会に正しい認識が広がっていないという現状があります。とても残念なことです。

 皆様にわかってほしいこと‥

自傷行為は自殺行為ではないということをわかってください

自傷行為は精神病を患っている人だけの行為ではありません

 自傷行為はアピール目的の行為ではありません

もし自傷行為を見つけても、言い聞かせようと説得したり、無理にやめさせようとすることはしないでください!そんなことをしても自傷行為をやめさせることはできません。

多くの人が、自傷行為に対して誤ったイメージを持っています

重ねてお伝えしますが、自傷行為はアピール目的ではないということをわかってください。「かまってちゃん」と揶揄されることもあり、気を引くための行為と捉えられがちです。

自傷行為がアピール目的で起こるというエビデンスはなく、自傷行為の90%が自傷行為は隠れて行う人がほとんどです。つまり、アピール目的での自傷行為はほとんどないということです。

例えば、親との関係が原因で自傷行為をしている人が、親に見つかったとします。そうすると親が心配してやさしく接してくれるようになります。やさしく接してくれる親の姿を見て、親をコントロールしたいという気持ちから、アピール目的で自傷行為をするようになることはよくあるります。

いくら親だってそう簡単に変わることはできません。やさしくされるのは一時のことです。「なんでそんなことをするの!」と責められるようになり、余計に関係が悪くなるケースを私はたくさん見てきました。だから、アピール目的での自傷行為が長く続くことはほとんどないのです。

自傷行為の種類

自傷行為は年齢を重ねるにつれて、治まっていく傾向にあります。自傷行為は決して稀なものではありません。自傷行為は、人目を避けてこっそりおこなわれることがほとんどです。友達に打ち明けた、親が発見したなどで発覚します。

自傷行為と言えば、一番知られているのがリストカットですが、リストカット以外にも身体を傷つける行為は他にも種類があります。例えば、下記のような行為が挙げられます。

|リストカット・アームカット

自傷行為は、リストカットが代表的なものですが、手首以外を傷つける場合も多いです。

だいたいは手首への自傷が25%、アームカットと言われる上腕への自傷が20%、手のひらが20%、手指が15%、太ももが10%です。

全体でみるとリストカットの割合は4人に1人あるいは4回に1回という割合で、それほど高くはありません。その他の部位の自傷行為を見落とさないようにしましょう。 

|大量服薬

市販薬や処方された薬、下剤等の大量摂取です。「オーバードーズ」「OD」とも呼ばれます。アルコールとの併用もしばしば見られます。重度の場合、救急搬送されて胃洗浄等の処置が必要になるケースもあります。 

|過食嘔吐

限界まで食べ物を胃に詰め込み、即座に故意に吐き出します。いわゆる「食べ吐き」です。摂食障害や醜形恐怖が背景にある場合もあります。下剤乱用とあわせて見られる場合も多いです。

|抜毛クセ

自分で自分の髪の毛を抜く行為です。髪の長い人だと、自分の髪を触るクセがある人もいるでしょう。触るだけなら何の問題もありません。

しかし、抜毛クセの人は抜いてしまいます。それも無意識に、何本も何本も抜いてしまいます。髪だけでなく、眉毛や睫毛を抜く場合もあります。

|薬物やアルコールの乱用

薬物やアルコールの乱用は一見すると自傷行為に見えません。しかし、薬物もアルコールも常用し、長年摂取し続けていくと、それは心身を損傷し、ひいては生命の危険にも及ぶことがあります。こうした行為は長期にわたる、目に見えにくい自傷と言えるでしょう。


この他にも、避妊しない性交渉や援助交際なども、自傷行為に併発している行動だと言えます。中でも睡眠薬などの薬物を過剰に服用する状態は、自傷行為を超えた自殺企図に近い行動になるでしょう。

このように自傷行為にはリストカット以外にも手段があり、人によってはリストカットをやめたとしても形を変えて自分を傷つけ続けるという状態はよくあります。

そのため、リストカットだけに目を奪われがちな自傷行為ですが、問題の本質を見誤らないように、周りの人は注意深く行為をも守ることが大切です。

自傷行為を引き起こす原因

自傷行為は、意図的に自身の身体に傷をつける行動を指します。切る、焼く、叩くなど、感情のコントロールや内的な苦痛の緩和を試みることが多いのです。

うつ病、不安障害、過去のトラウマと関連し、思春期や若年層で多く見られます。健康への害や長期的な精神的悪化を引き起こす可能性があります。 

自傷行為は様々な要因から引き起こされますが、感情的な苦痛を抑えるためにとられる行為だと理解してほしいのです。主に、下記の2つの背景が原因と考えられています。 

|過去の経験によるもの

過去の経験として、幼少期に保護者や周りの人から受けたネグレクトや虐待、学童期のいじめなどが影響しています。

親からの過剰なしつけや期待、虐待などにより、親の価値観に沿った生き方・行動が強まります。その結果、自分の存在を確かめたり、自分らしさを確認したりするための手段として、自傷行為を選ぶということです。

このような過去の経験は、人への信頼感がなくなったり周りに助けを求められなかったりするため、自傷行為に走ってしまいます。

|最近の辛い出来事によるもの

最近の身の回りで起きた、辛い出来事に影響されることも多いです。親や恋人、親友が原因で、強いストレスがかかった時に自傷行為としてリストカットをするということに繋がります。

また、友人などの身近な存在がリストカットをしている姿を見たり、テレビに出ている芸能人やSNSで活躍している有名人が自傷行為を告白したりすると、自傷行為に対するハードルが低くなります。その結果、まずは1回自傷行為をやってみようと思い、はじめてしまう人がいると考えられています。

自分が生きているのか、死んでいるのか分からない状態に陥るほど不安になってしまうと、身体的な痛みや鮮やかな血液の赤い色は、このような感情からの回復には効果的なのです。そのためにリストカットをして、流れる血を見て「自分は生きている」と思いホッとするとされています。

|心の痛みを体の痛みに置き換えたい

つらい感情が溜まりにたまって持って生き場がなくなった時に、どう処理をしていいのか分からなくなります。そこで一番身近な「自分の心と体」に目を向けなければいけません。

自分の感情(気持ち)は、自分ではなかなか上手くコントロールできるものではありません。なんだかよく分からない心のモヤモヤよりは、カミソリで傷つけた腕の痛み」の方が遥かに分かりやすいと考えてしまうのです。

心の痛みを和らげる方法はリストカット以外にもいくつもあるはずです。しかし、自分の体を傷つける以外の方法を考える力も無くなってしまうのです。

|生きていることを実感したい

切ったその瞬間、その一瞬だけ辛い気持ちから解放されて心が楽になる、快楽を得る、というのはリストカット経験者からよく聞かれる言葉です。

その一瞬を感じるために、自傷行為を繰り返すようになります。また、痛みを感じたり流れる血を見ることで、自分が生きていることを感じる、というのもよく聞かれます。

共通して言えるのは、強く深い負の感情を抱えていること、「自分の体は傷つけても構わない」という思考の偏りがあることです。

|薬物やアルコールの乱用

自傷をする人は人から無下に扱われたり、評価されなかったり、心配されなかったりしてきたことが多いようです。

自傷行為をすることで人からの注目を集めようとするところもあります。これまで得られなかった人から心配されたり、寄り添ってもらえたりすることを得ることができます。

しかし、あまりにも自傷行為が頻回に起こると、周りの人は「またやってる」と気にかけてくれなったりしていきます。すると、もっと酷い傷をつくり、人の気を引こうとします。こうしたことが繰り返され、結果的に孤立してしまうことになるのです。

自傷行為は延命行為なのです

負の感情に何もしないと、苦しくて発狂して死んでしまいそうなので、なんとか早く対処しなくてはなりません。そんな中、本人がようやく見つけたものが自傷行為であり、「死にたい」と言っていることとは矛盾しますが、生き延びるために切っているという側面があります。

「自傷行為なんてやめなさい」と伝えることは、本人には「延命行為なんてやめて死んでしまいなさい」と聞こえているとよく言います。自傷行為を止められると、本人が「じゃあ死ぬしかないですね」というのは、そういう心理からなのです。

このような複雑な心理については、カウンセラーの中でも特に自傷行為やパーソナリティ障害に経験を積んでいる方でないと理解できていないでしょう。 

自傷行為を克服するカウンセリング

道具を使う自傷行為の場合、ほとんどの方がパーソナリティ障害と言われます。もちろん重い精神疾患の方もいます。私はカウンセリングをしていく中で、自傷行為はこれだけではないと思っています。例えば、自分の存在を否定し、あえて自分を責め、自分を嫌いになる、自分は生きている価値もないと思い込みを強めてしまうことだって、私は自傷行為と同じだと思っています。

当相談室の自傷行為のカウンセリングは、【心の傷からの回復カウンセリング】で書いている内容に準じてカウンセリングを進めていきます。

稀に、カウンセリング自体が負の感情を引き起こす原因になる場合もあり、自傷行為が一時的に悪化することもあります。こういった時は、家族にとっては本当に心配でしょうが、こういった場合は、本人がカウンセリングを継続できるよう温かくサポートしてもらえたらと思います。

自傷行為という行為から、自分の気持ち(感情)を言葉にすることによって、少しずつ苦悩からの解放されていきます。

10代の場合は、まだパーソナリティが固定化していないため一過性の場合も多く、パーソナリティ障害とは限りません。自傷は、アーティストやマンガ・アニメのキャラクター達の個性の一つになっている場合があり、憧れを持つ子こどもたちも数多く存在します。その辺の見極めを私たちは観察しながら、カウンセリングで心の回復を行っていきます。

気持ちに寄り添ってあげてください!

自傷行為を見つけても無理に止めてはいけないとお伝えしましたが、身近な人が自傷をしていると気付いたら、どうしても止めたくなってしまいますよね。

もちろん本人との関係性にもよりますが、一番大切なことは、無理に止めようとせず、探ろうとせず、しっかりと話を聞いてあげることです。

自傷行為は何らかの理由があって、その悩みを和らげるために行っているものなので、その原因が解消されていないのに自傷行為だけを止めても、本人は追い詰められるだけです。

また、本人も何が原因なのか分かっていない場合もありますので、無理に話させようとしたり、探ろうとしないことが大事です。「自傷行為自体が悪いことではない」と、受容し共感してあげることが大事です。興味本位で「どうしたの?何があったの?」と聞いたり、諭したりすることはやめてください。

自傷行為をやめる方法ですが、やはり精神科、心療内科に通う必要があると思われるでしょうが、確かに医師の診察を受ける方は多くいらっしゃいますが、私のカウンセリング経験では、ほとんどが通院しなくても継続したカウンセリングを行っていくことで自傷をやめることができています。

なぜかというと、カウンセリングを受けていくことで心の傷が癒されていき、自傷する気持ちが次第に薄れて行きます。また自傷以外の方法でストレスを解消することができるようになったり、ストレスを上手にかわすことができるようになるからです。

家族・友人からのご相談もお受けしています!

まずは、家族の抱えている辛さや本人に言えない気持ちを思うままお話してください。話すのと話さないのとでは、ストレスの溜まり方が全然違うからです。

自傷行為を行う本人だけをカウンセリングに来させても、家族が理解できなければカウンセリングの効果は半減してしまいます。家族が温かくサポートできるように、まずは家族自身の心の状態をよくしていきましょう。

そのうえで、自傷行為をなぜやるのか、心の仕組みや心理を理解していただきます。また、育てる上で不適切な関わり方があったかどうかを振り返り、そのことを本人と共有することも大事なことです。「私たちの育て方が悪かった。ごめんね‥」と単に言葉にして誤っても、それだけではうまくはいきません。

どういう言葉や態度が本人を苦しめてしまっていたのか、お辛いかもしれませんが、私たちと一緒に振り返りながら、変えられるところは変えていきましょう。そういう姿勢を持っていただくことができないと、私たちの力だけでは自傷行為を克服することはいつまで経ってもできません。


当相談室のカウンセリングは、来談者の話を傾聴することで、現在のこころの状態を正しく理解することから始まります。傾聴とは、解釈を差し挟まず、心の「あるがまま」の状態を聴く専門的な作業ですこうしたカウンセリングによって、来談者は自分の「あるがまま」を発見します。これが回復の道程となります。