
心の傷をケアする‥ 大人の愛着障害
最近、SNSや書籍で「大人の愛着障害」という言葉を目にする機会が増えましたね。人間関係でいつも同じ繰り返しをしてしまう。何が原因かわからない生きづらさを感じる。そんな方々がこの「愛着障害」という言葉にたどり着き、「もしかして自分も愛着障害かも?」と感じるケースが少なくないようです。
「大人の愛着障害」について知ってはいるけど、具体的にどうしたらいいのかわからないという声をいただくことが増えてきています。ネットで検索しても「自己肯定感を上げましょう」とか「安全基地となってくれる人を探しましょう」といった表面的なアドバイスばかりで、根本的な解決策が見つからないのが現状だと思います。
「大人の愛着障害」の克服(改善)には、まず正しい理解が必要です。ここでは、「大人の愛着障害」について知っておくべき基本的な知識をお伝えし、克服に向けた具体的な道筋をご提案します。少し長くなりますがお読みください。
カウンセリングで改善できるの?
愛着障害やその影響を受けた人は、過剰な不安、人間関係での問題、自分に対する自己否定など、多くの問題を抱えることが多々あります。
しかし、カウンセリングや心理療法を受けることで、自己認識の向上、適切な自尊感情の発達、信頼関係構築の方法、自己肯定感の向上などの効果が期待できます。
愛着障害を持つ人たちにとって、安定した関係性を構築することは難しい場合がありますが、適切なアプローチや治療法を選択することで、愛着障害による問題を軽減できるようになります。
家族やパートナーにも参加してもらうことで、より良い関係性を築きながらカウンセリングの効果を高めることができます。
愛着障害を抱える人にとって、適切な支援や治療を受けることは、人間関係や健康的な生活を送るために不可欠な要素です。

こんなお悩みを抱えていませんか?
愛着障害は、他人と極端に距離を取ろうとする「反応性アタッチメント障害」と、知らない人でもかまわず甘えてしまう「脱抑制型愛着障害」に分けられます。どちらの場合も、意地が強い、わがままであるといった特徴が見られます。
また、大人になっても愛着障害の症状が続く場合、人との距離感、特に自分の子どもやパートナーとの接し方が分からなかったり、不安定な感情・自己イメージによって「うつ病」や「パーソナリティ障害」などの症状に悩んだりすることもあります。
例えば‥
■ コミュニケーションをとるのが苦手
■ 恋愛関係が続かない
■ 人間関係に楽しさ、喜びを感じない
■ 助けを求めるのが苦手
■ 他人に過剰に甘えてしまう
■ 自己肯定感が低い
■ 漠然とした不安感がいつもある
■ 安心感を感じることがない
■ 常にいらいらする
■ 感情を表現するのが苦手
■ 完璧主義(0か100かの捉え方をしがち)
■ 依存・うつ・不安障害
■ パーソナリティー障害・発達障害・双極性障害
これらは愛着障害やアダルトチルドレンの方々がよく抱える悩みです。

【愛着障害】と【アダルトチルドレン】は違います
愛着障害とよく混同される言葉に「アダルトチルドレン(AC)」があります。簡単にご説明しますので参考にしてください。
愛着障害 ――
幼少期に養育者(母親など)と心理的な絆=愛着が何らかの理由でうまく形成されず、問題が生じる状態のことをいいます。
アダルトチルドレン ――
子どもの頃の家庭内での経験により、心に傷を抱え、そのトラウマにより大人になったあとも様々な生きづらさを抱える状態のことを指します。
また、アダルトチルドレンは医学的な診断名ではありません。診断名としては使われませんが、「幼少期の経験による大人になってからも続く苦しみ」を表す言葉として一般に知られています。
近年は、子どもに対して不適切な関わりをする親を表す【毒親】という表現も広く知られるようになり、愛着に関する問題が関心を集めています。

大人の愛着障害の原因
愛着障害の主な原因は、子ども時代の不適切な育成環境です。親や周りの人たちが無関心だったり、虐待やネグレクトがあったりすると、子どもは必要な愛情を受け取れずに心に大きな傷を持つことになります。
具体的には、次のような状況が影響を及ぼすと言われいます。
無関心な親 ――
親が子どもに対して無関心であると、子どもは自分が愛されていないと感じることがあります。
たとえば、親が仕事や自分の問題に忙しすぎて、子どもとの関わりを持たない場合、子どもは愛情を求める声が無視されていると感じることが多いです。
このような環境では、子どもは自己肯定感を育むことが難しくなります。
虐待やネグレクト ――
虐待やネグレクトは、愛着障害を引き起こす大きな要因です。子どもが身体的、精神的、または感情的な虐待を受けると、その影響は深刻です。基本的なケアが不足していると、子どもは愛情を受け取れず、心に傷を負います。
これにより、他者との信頼関係を築くのが難しくなります。
家庭内の問題 ――
例えば、親の離婚や経済的な問題も愛着障害の原因となります。家庭の不安定さは、子どもにとって非常にストレスフルな環境となり、愛着形成に悪影響を及ぼします。
特に、親が感情的に不安定だと、子どもはさらなる不安を感じることになります。
親の精神的健康 ――
親の精神的な健康も愛着障害に影響を与えます。親がうつ病や不安障害を抱えていると、子どもに十分な愛情を注ぐことが難しくなります。
これにより、子どもは愛情を受け取れず、心に深い傷を持つことになります。親の心理的な状態が子どもに与える影響は大きいため、親自身が心の健康を保つことが重要です。
愛着障害は、こうした複数の要因が絡み合って起こることが多いです。一つの原因だけではなく、様々な環境や状況が影響を及ぼすことを理解することが大切です。

大人の愛着障害の特徴・症状
あなたの子ども時代を思い出して読んでみてください。愛着障害がある子どもは、次のような症状を示すことがあります。これらの症状は、愛着を作る過程での問題を反映しています。
愛着障害の方は次のような悩みを抱えることが多いようです。
情緒的な不安定さ ――
愛着障害を持つ子どもは、感情のコントロールが難しく、しばしば過剰に反応してしまいます。喜怒哀楽の表現が激しく、周囲の人々を困惑させることがあります。
感情のコントロールがむずかしい ――
慢性的に安心感が少なく、些細なことで傷つき落ち込みやすいです。HSP傾向が高いと表現されることもあります。過度に攻撃的になるときもあり、感情の揺れ動きが激しい傾向にあります。
対人関係が苦手 ――
人間関係で安心感や信頼感を持てない傾向にあります。コミュニケーションが苦手だったり人と適切な距離を保つことが難しかったりすることから、繰り返しトラブルを抱えることもあります。
人の顔色を気にしすぎて疲れてしまうというのもよくある悩みです。他者に対し過度に甘えて依存的になることもあれば、関わりを極端に恐れて回避する場合もあります。恋人や夫(妻)、子どもとの関係がうまくいかず悩む人もいます。
攻撃的な行動 ――
愛着の不全から、他者に対して攻撃的な態度を示すことがあります。これは、心の不安定さを表現する一つの方法です。
依存的または回避的な行動 ――
愛着障害を持つ大人は、他者に対して依存的になることが多い一方で、逆に他者との関係を避けることもあります。これは心の不安定さを反映した行動です。
自傷行為 ――
ストレスや不安を感じたときに、自分を傷つける行動を取ることがあります。髪の毛を抜いたり、爪を噛んだりすることで、心の痛みを表現することがあります。
自己肯定感の低下 ――
親(養育者)に褒められない、無視される、日常的に過度に叱責される などの経験から自己肯定感が低い傾向にあります。
また完璧主義であったり、0か100かの極端な捉え方をする傾向にあることも自己肯定感を低くする要因になります。適切に助けを求めることができず仕事や学業に支障がでるケースもあります。
仕事や勉強でつまずき、自尊心がより低くなり、「自分なんかどうせ」とやる気を失うなどして更につまずきやすくなるという負のループに陥ることもあります。
親密な関係の回避 ――
恋愛や友情などの親密な関係を築くことを避ける傾向があります。過去の経験から、他者に心を開くことができないのです。

間違えやすい【愛着障害】と【発達障害】
愛着障害と発達障害は、どちらも「対人関係の難しさ」という共通の特徴を持つため、専門医でも見極めが難しいことがあります。しかし、その根本的な原因は大きく異なります。
【発達障害(先天的)】
生まれ持った脳機能の特性により、認知や行動に偏りが生じるもの(ASDやADHDなど)。
【愛着障害(後天的)】
幼少期の環境や養育者との関わりの中で、安心感や絆を育みきれなかったために起こる、感情や関係性の問題。
発達障害が「やりとりや行動の仕組み」の苦手さであるのに対し、愛着障害は「人を信じる気持ちや距離感の掴み方」の戸惑いと言えるでしょう。
現在、病院で診断名がつかなくても、こうした生きづらさを抱える「グレーゾーン」の大人が多くいらっしゃいます。
大切なのは、愛着障害は後天的なものであるからこそ、大人になってからでも十分に改善が可能だということです。
過去に得られなかった安心感を補い、考え方の癖を少しずつ解きほぐしていくことで、今の生きづらさは必ず和らげていくことができます。

愛着障害を克服することは可能です
段階にもよりますが、自力では解決するのはかなり難かしいかもれません。なぜなら、この問題は潜在意識(無意識)レベルが原因だからです。潜在意識は普段は自分でも感じることはできません。
5歳までの親の接し方によって愛着スタイルが決定されると言われていることで、時間が経って諦めてしまったり、後悔してしまったりする方も少なくありませんが、就学期以降に抱える愛着障害であっても、カウンセリングや周囲の協力によって愛着障害を克服することは可能です。
子ども・大人に共通して、親密なやり取りができる人間関係を認識することが愛着障害の克服につながります。カウンセラーとの対話を通じて、悩みや問題を整理することで、問題の原因や対人関係のパターンなどを認識・改善するためのサポートをすることができます。
また、カウンセラーとの信頼関係の構築により、問題改善のための取り組みを行いやすくなったり、適切な対人関係、自分への自信を取り戻したりすることができるようになります。
幸せな人生を掴むためのステップ
あなたは、これまで周りの期待に応えようと一人で抱え込みながら本当によく頑張ってこられたと思います。生きづらさの根っこにある「愛着障害」を癒やし、心を軽くするための3つのステップを簡潔まとめてみました。
自分の「寂しさ」を認める ――
「親も大変だったはず」と自分を納得させる必要はありません。「あの時、本当は寂しかった」という当時のありのままの感情を否定せずに受け止めてあげてください。
安全基地を見つける ――
友人やパートナーなど、心が休まる「安全基地」となる人を見つけましょう。「ここなら大丈夫」と思える安心感が、一歩踏み出す勇気に変わります。
そのままの自分を肯定する ――
あなたの存在を尊重してくれる環境に身を置いてください。小さな成功を重ねることで、「自分はこのままでいいんだ」という自己肯定感が育まれていきます。
これからは他人のためではなく、自分の心をいたわるためにエネルギーを使っていきましょう。あなたのペースで、ゆっくりで大丈夫ですよ。
改善に向けて心がけること
改善のために自分自身で取り組もうとされる方もいますが、あまりおすすめはしません。自分ひとりで過去のことを振り返ることはできるのですが、過去を振り返ることによって辛く苦しい記憶がよみがえり、時に精神状態を悪くしてしまうのです。
そんな状態に陥ってしまい、抜け出すことができなくなった人が相談に来られる方は少なくありません。過去の辛さや苦しみにはひとりでは立ち向かおうとせず、カウンセラーを頼る必要があります。
カウンセラーは、相談者のペースに合わせ適宜調整しながら過去を振り返る作業をお手伝いするので、適切に過去を振り返り、愛着のケアがしやすいのです。

まとめ‥
「生きづらさ」の正体は、あなたの性格ではなく「大人の愛着障害」かもしれません。自分を責めたり、一人で抱え込んだりする必要はありません。
まずは専門のカウンセラーや信頼できる人に話し、現状を整理することから始めましょう。愛着障害は、適切なサポートによって必ず改善します。改善へのステップを踏むことで、自分自身や大切な人を「納得できる形」で愛せるようになり、人生はもっと軽やかで楽しいものへと変わります。
愛媛心理相談室では、対話と専門的なセラピーを通じて、あなたが二度と同じ悩みで苦しまないよう、心の回復を全力でサポートします。本来の「愛にあふれた人生」を一緒に取り戻していきましょう。